あなたの頭痛はどこから? 痛みの背後に潜む意外な病気
第3回 命に関わる病気から治療できる病気まで、知っておきたい二次性頭痛
田中美香=医療ジャーナリスト
日常生活の妨げとなる、つらい頭痛の原因や対処法を解説する本特集。今回は、別の病気の一症状として現れる頭痛を取り上げる。頭痛の原因の中には、手術を要する病気や命に関わる病気、失明の恐れがある病気など、思わぬものが隠れていることもある。最近では、コロナ禍で「マスク頭痛」なる新しいタイプの頭痛も登場した。その解決法も含め、頭痛の引き金となるものをまとめて紹介しよう。
『困った頭痛、危険な頭痛』 特集の内容
- 第1回日本人の4割が悩む「頭痛」 その原因は? どうすれば軽くなる?
- 第2回1回1~2分!「肩グルグル体操」「コマ体操」で頭痛を和らげる
- 第3回あなたの頭痛はどこから? 痛みの背後に潜む意外な病気←今回
命に関わる病気から治る病気まで、さまざまな病気が頭痛を起こす
頭痛はありとあらゆる原因から起こり、痛みの特徴や起こり方も千差万別だ。このことは、第1回、第2回でご紹介した「緊張型頭痛」や「片頭痛」のような一次性頭痛(ほかに原因となる病気がなく痛みが起こる頭痛)だけではない。他の病気の一症状として起こる頭痛、「二次性頭痛」にもさまざまなバリエーションがある。
二次性頭痛の中でも、特によく知られているのは「くも膜下出血」だろう。最近では早期治療によって一命を取りとめることも多くなったが、麻痺などの後遺症が残ることも多い、怖い病気だ。
原因となる病気が存在しない頭痛=一次性頭痛
代表は以下の3つ

別の病気の一症状として起こる頭痛=二次性頭痛
- 脳の病気(くも膜下出血や脳腫瘍など)や頭部外傷による頭痛
- 耳鼻科や眼科の病気による頭痛
- 痛み止めの使い過ぎで起こる頭痛 など
しかし、頭痛を伴うのは怖い病気ばかりではない。逆に、「命を落とすような病気なのではないか」と心配して医療機関にかかってみると、実は治療によって治すことが可能な病気だったということもある。さらに、2020年以降はコロナ禍で新しいタイプの頭痛も見られるようになったという。
今回は、このような頭痛の背後にある意外な原因について、よくあるパターンとポイントを見ていこう。
コロナ禍の「マスク頭痛」は、新鮮な空気を取り込めば軽減できる
まず、2020年から2021年にかけて、わずか1年で台頭してきた頭痛を紹介しよう。埼玉精神神経センター内・埼玉国際頭痛センター長の坂井文彦さんによると、それはコロナ禍のマスク着用を原因とする、「マスク頭痛」だという。
マスクをつけると、吐いた息が内側にこもって熱中症になりやすくなる、耳周辺の皮膚がかぶれる、といった話はよく耳にする。それに加えて、なぜ頭痛まで起こすのだろうか。
「大気中に含まれる二酸化炭素は0.04%程度ですが、口から吐き出す空気には約4%も含まれます。マスクをつけていると吐いた息の一部をそのまま吸い直してしまい、多くの二酸化炭素を取り込むことになります。すると、二酸化炭素の血管拡張作用により、脳の血管が広がり過ぎて周辺が圧迫されます。そこから炎症が生じ、非常に重い頭痛が出ることがあるのです」(坂井さん)

このマスク頭痛、対処法は非常にシンプルだ。二酸化炭素を多く吸うことが原因なのだから、反対に二酸化炭素の少ない空気をたくさん吸えばいい。感染リスクのない場所でマスクを外し、深呼吸してみよう。「大きく呼吸して新鮮な空気を取り込めば、マスク頭痛はかなり解消できます」(坂井さん)
コロナ禍で、片頭痛などの慢性的な頭痛が悪化する人も増加傾向だという。片頭痛は脳の反応が良いために生じるので、天候や気温などの環境の変化によって片頭痛発作が起こることがある(第1回参照)。「コロナ禍の外出自粛やテレワークのせいで運動不足になるなど、生活環境の変化から片頭痛を起こす人も多く見られます」(坂井さん)
また、耳にかけたマスクのヒモが不快な刺激となって片頭痛を起こす人もいるようだ。第2回で紹介した頭痛体操を試してみるなど、予防対策は早めに講じるようにしよう。
![]() | コロナ禍で増えた「マスク頭痛」は、新鮮な空気を多く吸い込めば軽減しやすい。 |