1回1~2分!「肩グルグル体操」「コマ体操」で頭痛を和らげる
第2回 片頭痛には画期的な予防薬も登場
田中美香=医療ジャーナリスト
慢性的な頭痛の代表格である、ギューッと締めつけられるように痛む「緊張型頭痛」と、ズキズキと脈打つ痛みが続く「片頭痛」。この2つの頭痛は、痛みが発生する仕組みがまったく違うため、セルフケアも分けて考えることが大切だ。どんな工夫をすれば痛みが和らぐのか? 薬の使い方はどう違うのか? 具体的な対処法を紹介しよう。
『困った頭痛、危険な頭痛』 特集の内容
- 第1回日本人の4割が悩む「頭痛」 その原因は? どうすれば軽くなる?
- 第2回1回1~2分!「肩グルグル体操」「コマ体操」で頭痛を和らげる←今回
- 第3回あなたの頭痛はどこから? 痛みの背後に潜む意外な病気
頭痛に悩んだとき、市販の鎮痛薬でやり過ごす人もいれば、辛抱できずに医療機関を受診し、診断を受けて薬を処方してもらう人もいるだろう。だが、頭痛の頻度が高ければ高いほど、また、服薬の期間が長くなればなるほど、薬を長く使い続けて大丈夫なのかと心配になる人もいるのではないだろうか。何とか薬に頼らずに済む方法はないものか――これは“頭痛持ち”にとって切実な悩みだ。
頭痛にはいくつもの種類があるが、慢性的に痛みが起こる慢性頭痛の中で最も多いのが、緊張型頭痛と片頭痛だ。この2つの頭痛は、痛みが生じる仕組みがまったく異なる(第1回参照)。
緊張型頭痛は、首・肩の筋肉の緊張や精神的なストレスが原因で、筋肉周辺の血管が収縮してギューッと痛む。それに対して片頭痛は、脳の血管が拡張して血液成分が血管外に漏れ出し、炎症を起こしてズキンズキンと脈打つ痛みが発生する。一方は「頭部の血管の収縮」、一方は「脳の血管の拡張」から痛みが生じてくる。したがって、当然、使われる薬の種類はまったく同じではないし、セルフケアの方法も違う。
世界的な頭痛診療の名医で、これまで10万人の頭痛患者の治療に当たってきた埼玉精神神経センター内・埼玉国際頭痛センター長の坂井文彦さんによると、緊張型頭痛や片頭痛は、服薬も大切だが、自力で軽減することも不可能ではないという。「患者さんの中には、セルフケアを工夫して片頭痛を自分で治したという人もいます」と坂井さんは話す。
坂井さんが指導する頭痛軽減法の中には、坂井さんが自ら考案した「頭痛体操」もある。特集第2回となる今回は、これら2つの頭痛に対する鎮痛薬の使い方に加えて、頭痛体操の方法や、頭痛の予防や軽減につながる生活上の注意点を紹介していこう。
市販薬は「使い過ぎ」による悪化に注意
頭が痛いとき、多くの人が真っ先に頼りにするのが鎮痛薬だろう。軽い頭痛なら市販薬で様子を見るという人も多いのではないだろうか。だが、ドラッグストアには痛み止めの薬が数多く並んでいて、どれを選べばいいのか迷ってしまう。そもそも市販の鎮痛薬に頼り続けて大丈夫なのか?という不安もある。

坂井さんによると、比較的軽い頭痛なら、市販の痛み止めを飲んでひと眠りすると良くなるという。「市販薬の使い方として、それはベストだと思います」(坂井さん)
市販の鎮痛薬に含まれる成分には、アセトアミノフェンやイブプロフェン、アスピリンなど、いくつかの種類がある。これらの成分を1種類だけ含む(カフェインなど、別の成分を含まない)鎮痛薬(単一鎮痛薬)は、緊張型頭痛にも、軽い片頭痛にも効果がある(片頭痛については軽い場合のみ)。
「痛み止めの成分だけが入った単一鎮痛薬を使って治る程度なら、それでいいと思います。軽い片頭痛なら、なるべく早めに飲んだほうが効果的です。緊張型頭痛の場合は、体を動かせば軽減しやすいので、特に早めに飲むべきというわけではありません」(坂井さん)
市販薬には、上記のような主要成分に加え、カフェインなど複数の成分を配合するタイプ(複合鎮痛薬)もある。この使い方についてはどうだろうか。
「複合鎮痛薬は早く効くことを目的としたような薬なので、ひどい頭痛でも最初は効くかもしれません。しかし、飲み始めるとどんどん薬の量が増え、薬の飲み過ぎによる、『薬剤の使用過多による頭痛』を起こすことがあります。脳の中で痛みを調節しているところがサボってしまうのです」(坂井さん)