日本人の4割が悩む「頭痛」 その原因は? どうすれば軽くなる?
第1回 最も多い「緊張型頭痛」と「片頭痛」では、反対のことが起きている
田中美香=医療ジャーナリスト
ズキズキしたり、ギューッと締めつけられるように痛んだり…。頭にさまざまな痛みが現れる「頭痛」は、日本人の4人に1人が悩むと言われるほど身近な症状だ。頭痛は、ほかに原因となる病気がないのに現れるものが多い一方で、中には、くも膜下出血のように命に関わる怖い頭痛や、意外な原因から起こる頭痛も隠れている。本特集では、身近でありながら意外と知らないことも多い頭痛をテーマに、治療の最新事情や、頭痛を軽減するセルフケアを紹介する。
『困った頭痛、危険な頭痛』 特集の内容
- 第1回日本人の4割が悩む「頭痛」 その原因は? どうすれば軽くなる?←今回
- 第2回1回1~2分!「肩グルグル体操」「コマ体操」で頭痛を和らげる
- 第3回あなたの頭痛はどこから? 痛みの背後に潜む意外な病気
もはや頭痛は国民病 「たかが頭痛」と思ってはならない
「頭痛がひどいので今日は会社を休みます」と言って休暇を取る人がいれば、周囲の人はたいてい「大丈夫?お大事に」と声をかけてくれるだろう。だがそれは最初の話。休みが目立ってくると、「また頭痛?」「薬を飲めばいいのに」とマイナス感情を抱く人や、ともすれば「本当に頭痛?」と疑ってしまう人もいるかもしれない。
頭痛は、本人にとっては休養せずにいられないほどつらい痛みでありながら、周囲からは「たかが頭痛で…」と軽く見られることもある。このギャップは、頭痛持ちにとってまさに“頭が痛い”悩みと言っていいだろう。
しかし、実際のところ、慢性的な頭痛に困っている人は膨大な数に上る。埼玉精神神経センター内・埼玉国際頭痛センター長の坂井文彦さんらが行った疫学調査によると、日本の15歳以上の約4割は何らかの慢性頭痛を持つことが分かっている(下図)。「たかが」どころか、頭痛は国民病と言っていいレベルの悩み事なのだ。

「よく知られている慢性頭痛の1つである、『片頭痛』だけでも、15歳以上の約840万人、15歳未満まで含めれば約1000万人が患っていると推計されています。10人に1人に当たる数字ですから軽視するわけにはいきません。それにもかかわらず、多くの人が頭痛でつらい思いをしていることについて、認識が広まっていないように思います」(坂井さん)
慢性頭痛で多いのは「緊張型頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」の3つ
一口に頭痛といっても、実はいくつものタイプがある(下図)。国際頭痛分類(国際頭痛学会)によると、その数はなんと367種類。その中でも患者数が多いのは慢性的に痛みが続く慢性頭痛で、肩こりなどからくる緊張型頭痛や、寝込むほどの痛みが定期的に出る片頭痛の頻度が高い。これらの頭痛は、原因となる病気がなく痛みが出ることから、「一次性頭痛」と呼ばれる。
一方、なんらかの病気が原因で頭痛が出ることもある(二次性頭痛)。その代表例が、ある日突然、雷に打たれたような激しい頭痛を起こす、くも膜下出血だ。また、最初は軽かった頭痛が徐々にひどくなり、その原因が実は脳腫瘍だったと判明するケースもある。近年は、鎮痛薬(痛み止め)を使い過ぎてかえって頭痛が悪化する人も増加している(薬物乱用頭痛)。さらに2020年以降は、コロナ禍のマスク着用がもとで起こる頭痛もよく見られるという。
原因となる病気が存在しない頭痛=一次性頭痛
代表は以下の3つ

別の病気の一症状として起こる頭痛=二次性頭痛
- 脳の病気(くも膜下出血や脳腫瘍など)や頭部外傷による頭痛
- 耳鼻科や眼科の病気による頭痛
- 痛み止めの使い過ぎで起こる頭痛 など
このように、頭痛に悩む人は相当数いて、頭痛にはさまざまなタイプが存在する。本特集では、これらの頭痛のうち、頻度の高い「片頭痛」と「緊張型頭痛」、思いがけない原因で起こる頭痛、命にかかわる頭痛を主に取り上げ、それらの特徴や、痛みを軽減する「頭痛体操」などのセルフケア、市販の鎮痛薬の使い方など、頭痛との上手な付き合い方を紹介していこう。