夜間頻尿を減らす「薬」「睡眠」「水分・塩分」のポイント
第3回 蓄尿や睡眠の問題から起こる夜間頻尿を軽減する
田村知子=ライター
夜、寝ている間に1回以上トイレに起きる夜間頻尿。その原因が、膀胱にうまく尿がためられなくなる「蓄尿障害」、あるいは夜間によく眠れず尿意を感じる「睡眠障害」である可能性が高い場合、どのような対策を取ればトイレの回数を減らせるのだろうか。特集第3回となる今回は、「蓄尿障害」「睡眠障害」を原因とする夜間頻尿の治療や対策、さらに夜間頻尿全般のセルフケアに欠かせない「水分・塩分」のとり方などについて解説していく。
『夜間頻尿からの解放』 特集の内容
- 第1回「夜間頻尿は年のせい」とあきらめる前に知っておきたい3大原因
- 第2回困った夜間頻尿 解決のカギは「夕方の足のむくみ」解消!
- 第3回夜間頻尿を減らす「薬」「睡眠」「水分・塩分」のポイント←今回
「蓄尿」と「睡眠」の問題が引き起こす夜間頻尿の解決法は?
「ぐっすり眠れない」といった悩みや、夜間の思わぬ転倒などにもつながりかねない「夜中のトイレ」。就寝中に1回以上トイレに起きる「夜間頻尿」は、主に3つの原因から生じることを、本特集の第1回、第2回で解説してきた。
3つの原因とはすなわち、夜間の尿量が増える「夜間多尿」、膀胱にうまく尿がためられなくなる「蓄尿障害」、そして夜間によく眠れない「睡眠障害」によってトイレに起きるケースだ。
今回はこれらのうち、「蓄尿障害」と「睡眠障害」による夜間頻尿の軽減法を、「夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]」(日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会)の作成委員長を務めた、桜十字病院泌尿器科医長(前・国立長寿医療研究センター副院長/同センター泌尿器外科部長)の吉田正貴さんに聞いていこう。
第1回で紹介した、自分の夜間頻尿の原因を大まかに知るためのセルフチェックのうち、以下に示した「『蓄尿障害』が原因の場合に見られることが多い症状」「『睡眠障害』が原因の場合に見られることが多い症状」に該当する人は、前立腺肥大症や過活動膀胱、あるいは不眠症や睡眠時無呼吸症候群といった病気が影響して、夜間頻尿が引き起こされている可能性が高い。
「蓄尿障害」が原因の場合に見られることが多い症状
前立腺肥大症や過活動膀胱と診断されている
男性で「尿の出が悪い」「残尿感がある」「昼夜を問わずよくトイレに行きたくなる」「尿を漏らすことがある」といった尿トラブルがある
男女共に「突然、我慢できないほどの強い尿意が起こる」ことが週1回以上ある
「睡眠障害」が原因の場合に見られることが多い症状
「就寝中にいびきをかいて、呼吸が一時的に止まることがある」「夕方以降に脚にむずむずするような不快な感覚がある」「睡眠中に足の指や足首、膝などが勝手に動く」のいずれかの症状がある
眠ってから3時間以内にトイレに起きる
夜、トイレに起きたあと、1時間以上眠れない
(監修:吉田正貴氏)
既に蓄尿障害や睡眠障害を伴う病気と診断されていて、夜間頻尿の症状がつらいと感じている人は、まず主治医に相談してほしい。特に、「睡眠障害に関連した病気の人は、眠りが浅いために夜中に目覚め、それを『尿意を感じて目が覚めた』と思い違いをしているケースはよくあります」と、吉田さんは話す。病気とまでは診断されていないものの、チェック項目のような症状がある人は、一度、泌尿器や睡眠の専門医を受診しておくといいだろう。「病気の治療をすることで、夜間頻尿の症状が軽減することもあります」(吉田さん)
前立腺肥大症は55歳以上の男性の2割、その多くが未治療
それぞれのチェック項目のポイントを解説していこう。まずは蓄尿障害について。膀胱に尿がうまくためられなくなる蓄尿障害は、前立腺肥大症(男性)か、過活動膀胱(男性、女性)が原因となっていることが多い。
男性特有の前立腺肥大症の主な症状は、尿が出にくい、尿の回数が多い、トイレに行く前に尿が漏れてしまう、残尿感がある、など。これらの症状は、膀胱の出口部の尿道を取り囲むように位置する前立腺が大きくなることで、尿道を圧迫したり、膀胱を刺激することで起きる。前立腺肥大症がある人は、55歳以上の男性の2割に当たる約400万人に上るという推計がある(*1)。55歳以上の男性の5人に1人は、前立腺肥大症に該当すると考えられるのだ。

しかし、厚生労働省の調査(*2)では、実際にこの病気で治療を受けている人は約47万人にとどまる。残る9割近くの人は、何らかの症状を抱えたまま治療を受けずに生活しているということになる。
*2 厚生労働省. 平成29年患者調査(傷病分類編)