糖尿病予防は「速筋を鍛える」! 階段は下りのほうが効果的
第2回 低めの負荷で“ラク”にできる「エキセントリック運動」を取り入れよう
二村高史=フリーライター
糖尿病の運動療法に詳しいうさみ内科の院長、宇佐見啓治さんが考案した「7秒スクワット」は、誰でも簡単に行えて続けやすく、確実に血糖値を下げる効果が期待できる。このスクワットは、速筋に効率よく刺激を与えることができ、低めの負荷でも続けていけば筋肉量を増やすことにつながる。こうした運動による効果は、実は「階段を下りる」ことでも得られるという。階段を「上る」のではなく「下りる」ことで本当に運動効果を得られるのだろうか? 宇佐見さんに詳しく聞こう。
『血糖値を下げる7秒スクワット』 特集の内容
- 第1回医師が考案! 血糖値が下がる「7秒スクワット」で糖尿病を遠ざける
- 第2回糖尿病予防は「速筋を鍛える」! 階段は下りのほうが効果的←今回
前回、糖尿病の運動療法に詳しい医療法人うさみ内科(福島県郡山市)の院長である宇佐見啓治さんが考案した「7秒スクワット」について紹介した。
「7秒スクワット」の基本的なやり方は、5秒かけてゆっくり腰を落とし、太ももが床と平行になったらその状態で2秒キープする、というもの。10回を1セットとし、1日に3セット行い、これを週に2日以上実施する。

「高齢者や肥満の人などでも取り組みやすいように工夫しました。過去に行った研究では、糖尿病の入院患者62人に『7秒スクワット』を実施してもらったところ、HbA1c(*1)の平均が9.9%から、8週間で7.5%に低下しました。このほか、血糖値が高めで気になるという人や、まだ糖尿病を発症していないものの、今後、糖尿病になるリスクが高いといわれている人でも、もちろん血糖値を下げる効果が期待できます」(宇佐見さん)
日本では、糖尿病患者が、その予備群を合わせると2000万人に達するといわれており、まさに“国民病”だ。健康診断の結果で血糖値が高めになっている人は、将来、自分が糖尿病にならないか不安に思うだろう。そういう人ほど、生活習慣を見直したり、宇佐見さんが提唱する「7秒スクワット」を行ったりすることで、発症リスクを下げたいものだ。

特集の後編となる今回は、引き続き宇佐見さんから話を伺い、「7秒スクワット」が生まれた背景や、それが血糖値を下げる仕組みについて深掘りすることで、将来の糖尿病リスクを下げるために具体的に何ができるのかを探っていこう。
また、宇佐見さんは「年を取っても筋トレを続けて、筋肉量をキープしていくことが長生きにつながる」と言う。これはどういうことなのだろうか? 最新の研究結果を交えながら、筋肉のもたらす長寿効果についても考えてみよう。
糖尿病を予防するなら有酸素運動? 筋トレ?
前回も述べたように、糖尿病対策の3本柱は、「食事」「薬」「運動」だ。このうち、近年、大きな進歩を遂げたのが、「薬」つまり薬物療法だという。
「特に、2014年に日本で発売になった『SGLT2阻害薬』は画期的なでした。それまでは糖尿病の薬というと、インスリンを多く出させたり、インスリンの働きを高めるものでしたが、SGLT2阻害薬は、糖をそのまま尿とともに体の外に出すという新しいものです。比較的若い患者さんに適していて、メタボリックシンドローム(メタボ)の改善効果も期待できます」(宇佐見さん)
仮に糖尿病になったとしても、こうした薬があると聞くと、少し安心できるかもしれない。だが、発症前は、たとえ糖尿病の予備群だといわれる状態であっても、薬で血糖値を下げるわけにはいかない。食事の改善や、運動などによって、予防に取り組む必要がある。