脂肪肝の「危険な兆候」を早めにキャッチする方法
第2回 放置すると肝臓がんに?! 飲酒しない人、やせている人も無縁ではない
田中美香=医療ジャーナリスト
肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝」は、成人の4人に1人の割合で見つかるありふれたもので、アルコールが関与しない脂肪肝については、放っておいても問題ないと考えられてきた。だが近年は、そうした脂肪肝の中にも肝硬変、さらに肝臓がんへと発展する「危険な脂肪肝」があることが分かってきており、「どんな脂肪肝も放置は禁物」と肝臓専門医は警鐘を鳴らす。では、そうした脂肪肝の「危険度」を知るにはどうすればいいのだろうか? 肝臓の健康を守る生活のコツは何か? 誰にとっても人ごとではない脂肪肝の現状について、新百合ヶ丘総合病院消化器・肝臓病研究所所長の井廻道夫さんに聞いていく。
『忍び寄る肝臓の危機』 特集の内容
- 第1回「γ-GTP」だけ見ていては見逃される、肝臓の危険なサインとは?
- 第2回脂肪肝の「危険な兆候」を早めにキャッチする方法←今回
- 第3回再発の多い「肝臓がん」、リスクが高いのはどんな人?
成人の4人に1人は、「脂肪肝」を持っている
医学の進歩によってさまざまな病気が治るようになり、がんの生存率も大きく向上してきた。その一方で、患者が減るどころか、むしろ増えている病気もある。その代表が、食べ過ぎ・飲み過ぎ、運動不足、喫煙などの不摂生からくる病気、いわゆる生活習慣病だ。生活習慣病には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などが含まれる(*1)。
食事から摂取したカロリーが消費カロリーを上回り続けると、余ったエネルギーは脂肪組織や肝臓で中性脂肪に変換され、主に脂肪組織に蓄積される。そこから始まるのが肥満で、肥満は全身でさまざまな病気や異常を引き起こす。肝臓に脂肪がたまってフォアグラ化する「脂肪肝」もその1つだ。
肝臓の病気のスペシャリストである、新百合ヶ丘総合病院消化器・肝臓病研究所所長の井廻道夫(いまわりみちお)さんは、「脂肪肝は世界中で問題になっていて、世界の成人の約25%が脂肪肝に該当すると言われています」と話す。健康診断や人間ドックで腹部エコー(超音波)検査を行うと、肝臓にたまった脂肪が白っぽく見える、脂肪肝特有の画像が10~20%の人に確認されるという(第1回参照)。

一部の「危険な脂肪肝」は、肝硬変や肝臓がんに発展していく
脂肪肝の原因として、真っ先に思い浮かぶのは「お酒の飲み過ぎ」だ。肝臓はアルコールを分解する働きを持つが、アルコールは中性脂肪の合成も高めるため、アルコールを大量摂取する生活を続けると脂肪肝になりやすい(アルコール性脂肪肝)。
しかし、近年は成人1人あたりの飲酒量が減少してきたこともあり、アルコール由来の脂肪肝はそれほど多くない。アルコール性脂肪肝を含めたアルコール性の肝臓病全体で、患者数はおよそ240万人と言われている。「むしろ、今、問題になっているのは、お酒を飲む人よりも、飲酒習慣のない人の脂肪肝です。こちらは国内に約1000万~2000万人いると言われています」(井廻さん)
アルコール性脂肪肝は、3割程度が肝硬変、肝臓がんへと進んでいく。一方で、アルコールが原因ではない「非アルコール性脂肪肝」(正確には、非アルコール性脂肪性肝疾患)については、かつては放っておいても問題ないと言われていた。
だが、今ではその説は否定されている。非アルコール性の脂肪肝も、放置すると1~2割は慢性的な肝臓の炎症を起こし、その一部は肝硬変、肝臓がんへと進むことがある――。これが現在の定説だ(下図)。

脂肪肝という言葉の響きから、脂っこいものをよく食べる人限定の病気、というイメージを抱く人もいるかもしれない。しかし、脂肪肝は誰にとっても「明日は我が身」、あるいは気づいていないだけで「すでに我が身」かもしれない病気だ。太っていない人も、脂肪肝になる可能性はあるという。
では、脂肪肝になりやすい人にはどんな特徴があり、脂肪肝を解消し、肝臓を守るために今日からできることは何なのだろうか。自分の脂肪肝が「危険な脂肪肝」かどうかを知る方法はあるのだろうか。
実は、健康診断でおなじみの項目から、自分の肝臓の「危険度」を知ることができる簡単な方法があるという。次ページ以降で詳しく解説していこう。