インプラント、ブリッジ、入れ歯――自分に合った義歯はどう選ぶ?
第3回 インプラントは一度入れたら一生もの?
柳本 操=ライター
生涯健康に過ごすには、中高年で変化する歯茎や歯の状態に合わせて歯磨き方法を見直し、歯の健康を保つことが大切だ。しかし、虫歯や歯周病が悪化したり、不慮の事故などによって歯を失ってしまうこともある。そんなとき、抜けたままに放置すると様々な支障をきたすため、失った歯を「義歯」で補う必要がある。義歯には、ブリッジ、入れ歯、インプラントなどがあるが、それぞれ、どんなメリット、デメリットがあるのだろう。インプラントは一度入れたら一生ものなのか。義歯についての疑問を解決しよう。
『後悔しないための「歯」の守り方』 特集の内容
- 第1回高齢になってからでは遅い! 40~50代から始めたい「歯の本気ケア」
- 第2回歯を失う2大要因「虫歯・歯周病」 諸悪の根源を除去する4つのコツ
- 第3回インプラント、ブリッジ、入れ歯――自分に合った義歯はどう選ぶ?←今回

歯を失ったまま放置すると、口腔環境はさらに悪化する!
第1回、第2回では、自分の歯を健康な状態に保つことがいかに一生の健康に関わるかについてお伝えしてきた。しかし、虫歯や歯周病に気を付けて歯のケアをしていたとしても、「歯を失う」リスクはゼロではない。事故で歯をぶつけて失ったり、氷や梅干しの種など硬いものを強くかんで歯が割れてしまうこともある。

そして、実際に歯を失ったとき、1本ぐらいなくても、他の歯があればなんとか補えるだろう――と抜けたまま放置している人もいるのではないだろうか。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野教授の水口俊介さんは、「歯を失ったら、すぐに補うよう、手当てするべきです」と強調する。
歯には、周囲にスペースが空くとすぐにその隙間を埋めようとする性質がある。「隙間を埋めようとして、隣の歯が倒れて斜めになったり、抜けた歯とかみ合わさっていた上あるいは下の歯が伸びたりすることもあります。また、1本の歯が動くと、さらに周囲の歯も動いて、新たにできた隙間にプラーク(歯垢〔しこう〕)がたまりやすくもなります。その結果、虫歯や歯周病が悪化し、別の歯をさらに失うリスクもあるのです」(水口さん)
プラークとは細菌やその代謝物の塊であり、プラークにすむ細菌が虫歯や歯周病菌を引き起こすことは第2回で解説した通りだ。
以下に、歯を失ったまま放置することによって発生するデメリットを挙げた。このようなデメリットが表面化してから治療すると、治療期間が長くかかり、費用もかさむ。だから、歯を1本でも失ったらすぐに適切な義歯を補って、口腔機能を維持することが大切なのだ。
歯を失ったまま放置することによるデメリット
- 歯がない部分の隣の歯が傾いてくる
- 失った歯とかみ合わせていた部分の歯が伸びてくる
- 他の歯が動くことによって全体的に歯並びが悪くなる
- 食べ物をかんだり粉砕する能力が低下する
- 歯のない部分の隣の歯にプラークがたまり、虫歯や歯周病が悪化する
- 歯が抜けた部分の骨や歯茎がやせて、歯を補う治療が難しくなる
- 発音がしにくくなる
- 他の歯の負担が増えて、歯の破折の原因になる
- 見た目が変化する(特に前歯など目立つ部分の歯が抜けた場合)
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