歯を失う2大要因「虫歯・歯周病」 諸悪の根源を除去する4つのコツ
第2回 虫歯、歯周病は「あるもの」さえなければ発生しない感染症
柳本 操=ライター
歯を健康に保つことは、食べる喜びや、会話の楽しみの維持に直結するばかりか、寿命や認知症リスクとも密接に関係している。そして、歯を守るための第1の防御策が「歯磨き」だ。「そんなことは知っている」と侮るなかれ。歯磨きには「絶対的に重要」な目的があり、その目的に合った歯磨きができているかどうかで、その後の歯の健康が大きく左右される。
特に中高年以降は、歯を失う2大要因である「虫歯」や「歯周病」になりやすく、また、進行しやすくもなるので、一層注意が必要だ。歯を失うリスクと正しいケアについて考える本特集、今回は「虫歯」「歯周病」を正しく認識し、これがなければ虫歯も歯周病も起こらないという「あるもの」を除去するコツをマスターしよう。
『後悔しないための「歯」の守り方』 特集の内容
- 第1回高齢になってからでは遅い! 40~50代から始めたい「歯の本気ケア」
- 第2回歯を失う2大要因「虫歯・歯周病」 諸悪の根源を除去する4つのコツ←今回
- 第3回インプラント、ブリッジ、入れ歯――自分に合った義歯はどう選ぶ?
虫歯も歯周病も実は「感染症」

歯を失うと、食べることはもちろん話すこともスムーズにいかなくなるうえ、見た目の若々しさも失われる。それだけでなく、歯の本数が減ることは死亡率や認知症、要介護リスクにも影響するなど、「一生」「全身」に関わるリスクとなることを第1回ではお伝えした。
今回はまず、歯を失う2大要因となる「虫歯」と「歯周病」について、中高年以降に注意すべきポイントを整理していこう。
虫歯や歯周病というと、かねて指摘されてきたことなので、「はいはい、分かっています…」とスルーしたくなる人も少なくないと思うが、認識を新たに日々の対策に取り組むことが健康寿命の延伸にもつながる。
特に、改めて認識していただきたいことの一つが、虫歯や歯周病は、後述する通り、新型コロナやインフルエンザなどと同じ「感染症」の一種だということだ。コロナやインフルのウイルスから身を守るために日々防御策を取るのと同様、歯についても、細菌の感染を防ぎ、重症化を防ぐための策が極めて重要となる。
言うまでもなく、一度失った自分の歯は、二度と元には戻らない。近年はインプラントなどの義歯も進化しているとはいえ(詳しくは次回)、自分の歯を維持することが健康長寿の基礎の1つだということは前回詳しく解説した通り。その重要性を認識しつつ、以下、中高年以降の世代が今後数十年にわたって歯の健康を守るために注意すべきポイントを見ていこう。
要注意! 中高年以降は「虫歯」が増えやすい
まずは「虫歯」の実態について知ってほしい。2016年(平成28年)の「歯科疾患実態調査」によると、20歳以上の9割以上が虫歯になったことがあり、20歳以上の3割が未処置の虫歯を持っている。この調査結果を見ると、45歳以上で虫歯を持つ人の割合は、近年になるほど大きくなっていることが分かる(グラフ)。歯を持っている高齢者が増えた結果として、高齢者の虫歯が増えているのだ。ただ歯を残せば安心、というわけではなく、中高年の今から、健康な歯を維持する意識を強く持つことが大切だ。

虫歯はあったけれどすでに治療済みだから…と安心している人もいるかもしれないが、それは早計だ。治療済みであっても、毎日歯磨きをしていても、中高年以降は虫歯が増えやすいからだ。
「実は、歯を削って詰め物をした箇所に年月がたつにつれて隙間が生じ、そこから虫歯になることは少なくないですし、そうでなくても、年齢とともに虫歯リスクは高まります。歯の根元の歯茎が下がって露出した部分に根元の虫歯(根面う蝕〔しょく〕)ができやすくなるのです」と、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野教授の水口俊介さんは説明する。