長引くコロナ禍で、おウチ時間が増えているのに、満足できる睡眠はとれていない――。そんな人も少なくないでしょう。「たまに睡眠不足になるくらいどうってことない」と思う人もいるかもしれませんが、実はそんな考えが、肥満、生活習慣病、認知症などのリスクを高めているかもしれません。睡眠が健康維持にどう関わっているのかを4つのポイントから見ていきましょう。
『体と脳が老けない睡眠』 特集の内容
- 第1回睡眠が十分でないと老化リスクに! 脳と体を若く保つ睡眠のポイント
- 第2回睡眠不足だと怒り倍増? 感染症リスクも 睡眠と健康のヒミツ←今回

睡眠不足や中途覚醒の増加、起きたときの疲労感は、日中のパフォーマンスの低下や記憶力の低下につながるが、それだけではない。睡眠不足がたった2日続くだけでも、食欲を抑えるホルモンの分泌が低下し、逆に食欲を増すホルモンの分泌が増加するため、食欲が高まりやすいことがわかっている。
また、慢性的な寝不足状態にあると、交感神経の緊張が続くため血圧が上がりやすく、脂質や糖の代謝も悪くなる。肥満、糖尿病、心臓病の有病率は、睡眠不足の人では明らかに高くなり、日本人男性を対象にした調査からは、睡眠時間が6時間の人は、7~8時間の人に比べて死亡率が2.4倍高くなるという報告もある。ただし、長く眠ればいいというものでもない。睡眠時間が長すぎても、肥満や死亡率が高くなるからだ。
特に、女性の場合は月経や妊娠、出産、閉経など女性ホルモンのバランスが大きく変わることで、眠気の増加や不眠、睡眠の質の低下が生じやすい。また、更年期以降は、睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」も増えやすくなることがわかっている。
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睡眠不足が続くと 脳の老化 が加速する |

眠っている間に、脳では神経回路の再構築や、記憶の定着などのメンテナンスが行なわれている。さらに、「脳のお掃除タイム」であることも、近年明らかになってきた。
脳は、安静時で全身の20%にもなる多量のエネルギーを消費していて、その過程で1日に7gものたんぱく質を使っては入れ替えている。このときできるたんぱく質老廃物の排出が、主に睡眠中に行われている可能性があるという。
長年、脳には老廃物回収に使われるリンパ系システムが存在しないといわれてきたが、どうやら寝ている間に脳細胞が収縮し、細胞間を埋める脳脊髄液に流れが生じることで老廃物が排出されるという。
疫学調査などで、睡眠不足や不眠、睡眠の質の低下などがアルツハイマー型認知症の発症リスクを高めることが報告されているが、その理由が、夜間の脳のお掃除にあるかもしれない。
睡眠不足や、睡眠の質の低下が脳の萎縮を早めるという報告もある。若さを保つには、いかに量的にも質的にも“いい眠り”をとるかがカギといえそうだ。
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