コロナ禍で男性ホルモンが低下? 名医が教えるセルフチェック法とは
第1回 人に会ったり体を動かす機会が減ると男性更年期障害につながる恐れが
伊藤和弘=ライター
「疲れがとれない」「意欲が湧かない」などの症状が表れる男性更年期障害は、男性ホルモンのテストステロンの低下が原因。そんな男性更年期障害が、コロナ禍を機に増えているという。体に不調をもたらすだけでなく、生活習慣病や動脈硬化、認知症などのリスクも高めてしまう男性ホルモンの低下は、どのような仕組みで起きるのか。対策はどうすればいいのだろうか。順天堂大学大学院医学研究科・泌尿器外科学教授で日本Men’s Health医学会理事長も務める堀江重郎さんに解説していただこう。
「男性ホルモン」のパワー 特集の内容
- 第1回コロナ禍で男性ホルモンが低下? 名医が教えるセルフチェック法とは←今回
- 第2回男性ホルモン低下が認知症や生活習慣病のリスクに そのメカニズムとは?
- 第3回名医が勧める「男性ホルモンを上げる食事」はズバリこれ!
その不調、「男性の更年期」かも…

新型コロナウイルス感染症の勢いに衰えが一向に見られず、2021年1月には再び緊急事態宣言が発令されることとなった。不要不急の外出自粛が叫ばれる中、多くの企業でテレワークが実施され、会議や商談もオンラインになり、週1~2回しか出社しなくなってしまった、という人も珍しくない。
そんな中、コロナ禍が、意外な面から健康に悪影響を与えていると指摘するのが、男性ホルモンや男性更年期障害の対策に詳しい、順天堂大学大学院医学研究科・泌尿器外科学教授の堀江重郎さんだ。堀江さんは、日本Men’s Health医学会の理事長も務めている。
「特に40代以上の中高年世代の男性で、疲れがとれない、意欲がわかない、という人が増えている実感があります。これは、単なる“コロナ疲れ”で片づけていい問題ではありません。人に会わなくなり、体を動かす機会が減ったことをきっかけに、男性ホルモンの分泌が減り、男性更年期障害が起こっている可能性があるのです」(堀江さん)
閉経がある女性だけでなく、男性にも更年期障害があることが今ではかなり知られるようになった。主要な男性ホルモンであるテストステロンが減ることで、性欲の減退や勃起機能の低下に加え、筋力低下、関節痛、ほてり、頻尿、不眠、意欲の衰え、うつ症状など、心身に様々な不調が起こってくる。
医学的にはLOH症候群(late-onset hypogonadism=加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれる病気であり、診断基準は1dLの血液中にテストステロンが300ng(ナノグラム=10億分の1g)以下の場合とされている。
年を取ると一般にテストステロンの分泌は減っていくが、思いのほか個人差が大きい。堀江さんによると、「80歳でも若者と張り合える人もいれば、30代でも高齢者と同じくらいの人もいる」という。テストステロンの分泌は年齢以上に生活習慣やストレスの影響を受けやすく、40歳を過ぎればいつ男性更年期障害になってもおかしくないのだ。

男性ホルモン低下で意欲が減退し、病気のリスクも高くなる
代表的な男性ホルモンであるテストステロンの働きは、性機能を正常に保ち、筋肉や骨を強くするほか、動脈硬化を防ぎ、認知機能を高める作用もある。なお、テストステロンは主に精巣(睾丸)から分泌されるが、女性でも副腎や卵巣から分泌している。
テストステロンが低下し、体に前述のような不調が起きても、「ただ単に疲れているだけ」「年を取ったせいだろう」などと見逃されがちだ。だが、テストステロンの分泌が減ってLOH症候群のレベルまで落ちると、男性の心身に深刻な影響が表れ始め、やがて寿命をも左右する病気につながってしまう可能性があるのだ。