体重をかけて30秒キープ! 5つの「自重ストレッチ」で腰痛予防
第2回 体幹と股関節を柔らかくして腰への負担を減らそう
伊藤和弘=ライター
全身の血流を改善し、肩こりや腰痛を予防するだけでなく、血管の老化を防ぎ、血糖値を下げる効果も期待できるストレッチ。「体が硬くてストレッチは痛いからちょっと…」と敬遠していた人にぜひ試していただきたいのが「自重ストレッチ」だ。筋力を使わずに重力(体重)を利用して筋肉を伸ばす自重ストレッチは、痛みもなく、体が硬い人に最適なストレッチ。今回はその実践編をお届けする。
重力で楽に“伸ばされる” !「自重ストレッチ」で体をほぐす 特集の内容
- 第1回体が硬い人は血管も硬い!「自重ストレッチ」で血管若返り、腰痛・肩こり予防
- 第2回体重をかけて30秒キープ! 5つの「自重ストレッチ」で腰痛予防←今回
- 第3回つらい肩こりを解消する4つの自重ストレッチ 「しっかり30秒」がカギ
痛みがなく伸ばしやすい自重ストレッチは腰痛予防にもピッタリ
筋肉を柔らかくして血行を改善し、関節の可動域を広げる「ストレッチ」は、それ自体が手軽な運動になるだけでなく、体の左右差や動きの悪さを改善し、ひざや腰の痛みやケガ、肩こりなどを予防する効果がある。さらには、血糖値を下げ、動脈硬化を改善するといった、生活習慣病の予防効果も期待できることを、この特集の第1回でご紹介した。
パーソナルトレーナーでCALADA LAB.(カラダラボ)代表の比嘉一雄さんは、「ストレッチで体を柔らかくすることは、筋トレで筋肉をつけることよりも、実は簡単です」と話す。ストレッチを毎日の習慣にすれば、どんなに体が硬い人でも、確実に柔らかくなっていく。ただ、体が硬い人がストレッチをすると、ピリピリとした痛みを感じやすい。3日坊主に終わらせずに継続するためには、できるだけ痛みがなく、気持ちが良いと感じられることが重要だ。
その点、比嘉さんが提唱する「自重ストレッチ」は、体が硬くてストレッチで痛みを感じやすい人に最適なストレッチだ。自重ストレッチとは、腕などの「筋力」を使って筋肉を伸ばすのではなく、「重力」を使って伸ばすストレッチのこと。全身の力を抜いてリラックスした状態から、自分の体重(自重)を利用して筋肉を無理なく伸ばしていく(図1)。

自重ストレッチは筋力を使わないため、全身を脱力できて、筋肉が伸びやすい。さらに、負荷を調節しやすいため、強く伸ばされた筋肉が縮もうとして起こる「伸張反射」が起きにくく、痛みも少ない。体が硬い人にとって、ストレッチはピリピリとした痛みが伴い、あまり心地よくないものだが、自重ストレッチは痛みが少ないので心理的なハードルが低く、長く続けられるという。
ということで、今回からいよいよ実践編。まずは自重ストレッチの3つの基本を押さえよう。
筋肉を伸ばした状態で、息を吐き出しながら「30秒キープ」
自重ストレッチを実践する際に、基本となるのは以下の3つのポイントだ。
1 筋肉を伸ばした状態を30秒キープする
筋肉や筋膜には、もともと組織にバネのような弾性があり、伸ばされると縮もうとする性質がある。筋肉が急激に伸ばされると、筋線維の間にある「筋紡錘」と呼ばれるセンサーが脳に信号を発して、筋肉がちぎれないように、縮もうとする力が加わる(伸張反射)。これがストレッチで感じる、ピリピリとした痛みの正体だ。
「筋肉を適度に伸ばした状態でキープしてあげると、筋紡錘の感度が低下し、伸張反射が起こりにくくなります。その目安が20秒です。一般的なストレッチの解説本では、1つのストレッチにつき伸ばす時間を10~20秒程度に設定しているものが多いのですが、本当に筋肉を脱力してしっかり伸ばせるようになるのは20秒以降です」と比嘉さんは話す。
こうしたことから、自重ストレッチで姿勢をキープする時間の目安は、「30秒」。自重ストレッチは筋力を使わないため、30秒同じ姿勢をキープすることはさほど難しくないはずだ。この「30秒ルール」を忘れずに、じっくり伸ばしていこう。「実際にやってみて、30秒は長いなと感じる場合は、テレビを見たり音楽を聴きながらやってもいいと思います。ただ、頭の向きを変えてしまって首に変な力が入らないように注意してください」(比嘉さん)。
2 ゆっくり息を吐きながら筋肉を伸ばす
ストレッチをするときの呼吸は、筋肉を伸ばしながらゆっくり息を吐いていくのが基本だ。息を吐くことによって脱力しやすくなり、筋肉がより伸びやすくなる。「筋力を使わない自重ストレッチは、力んで息が止まることがないので、ゆっくり息を吐き出すことができます。息を吐き出した後は、自然な呼吸で軽く息を吸い込み、再びゆっくり吐き出しましょう」(比嘉さん)。筋肉がじわじわと伸ばされていく感覚を味わいながら、ゆっくり呼吸をしよう。
3 運動の直後、お風呂上がりなど、体が温まっているときに行う
ストレッチを行うタイミングは、運動の直後がベストだ。「体の内側から熱が発生し、筋肉が温まっているタイミングが、最も筋肉を伸ばしやすく、ストレッチの効果が得られやすくなります。さらにその効果も長続きするので、いいこと尽くしです」(比嘉さん)
運動の習慣がない人や、運動をしなかった日は、物理的に体が温まっている風呂上がりなどがお勧めだ。人によってやりやすい時間帯は違ってくるが、体温が低い起床直後は、筋肉が伸びにくいので避けたほうがいいだろう。
では早速、腰痛予防の自重ストレッチを比嘉さんに紹介していただこう。