「血圧は下げたい、でも減塩は…」 そんな人にお勧めの「塩出し食」とは
第3回 塩出しに効くカリウム・マグネシウム・カルシウムを効率よく摂取しよう
田中美香=医療ジャーナリスト
高血圧を改善する食事といえば、「一に減塩、二に減塩…」と、我慢を重ねて薄味に耐えるという印象をお持ちの方が多いのではないだろうか。塩分摂取を減らすことはもちろん重要だが、「いかに塩分を体から出すか」に着目することも大事だと東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授の市原淳弘さんは指摘する。さらに、日々摂取している飲み物の中にも血圧にいいものがある。また、前回紹介した血圧を下げる成分「一酸化窒素(NO)」を作る材料となる食材もあるという。今回はこれら食事面での血圧対策を一挙に紹介しよう。
「高血圧」改善で、健康寿命を延ばす 特集の内容
- 第1回4300万人が患う国民病「高血圧」 数ある病気の中でも「別格」な理由
- 第2回高血圧の人は筋トレNG? どんな運動をすれば血圧を下げるのに有効か
- 第3回「血圧は下げたい、でも減塩は…」 そんな人にお勧めの「塩出し食」とは←今回
- 第4回姿勢を正すだけでも血圧改善! 高血圧を防ぐ「王様座り」のススメ
血圧を下げるなら、減塩ばかりでなく「塩出し」にも着目しよう
高血圧は日本人の生活習慣病の中で患者数が最も多く、放置すれば、動脈硬化から脳卒中や心筋梗塞などを起こし、死に直結することもある病気だ。感染症以外の病気から死亡を引き起こすリスクを調べた日本の研究では、高血圧は喫煙に次ぐ大きな危険因子であり、非喫煙者に限っていえば最大のリスクであることが分かっている(詳しくは第1回をご覧ください)。
それほど私たちにとって脅威であるにもかかわらず、治療せず放置している人も多い「高血圧」の対策を紹介する本特集。前回は血管の柔軟性を高め、血圧を下げる物質、一酸化窒素(NO、エヌオー)の働きと、それを増やす「運動」の秘訣を解説した。そして今回は高血圧を改善する「食事」のポイントについて紹介しよう。
高い血圧を下げるためには食生活の改善が必要で、減塩第一だということは皆さんご存じだろう。現在、日本人は1日10g程度の食塩を摂取しているが、日本高血圧学会が推奨する摂取量は1日6g未満(下図)。食事などからとる食塩の量を今の3分の2に減らすと考えただけで、「薄味なんておいしくないし、どうせ長続きしないからやってもムダだ」と、あきらめモードになってしまう人も少なくない。そんな人に向けて、東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授の市原淳弘さんは、食塩摂取量を減らすことだけにとらわれず、視点を変えるようアドバイスする。
「減塩が高血圧の改善につながることは確かで、ぜひ実践していただきたいのですが、実際は減塩を続けるのが難しい人もたくさんいます。そうであれば、塩分の摂取量を減らすことばかりに気をとられず、逆から考えてはどうでしょうか。体から排出する塩分量を増やすことにも着目してみるのです。私がお勧めしているのは、体から塩分を出す食事、『塩出し食』です」(市原さん)
高血圧対策においては、塩分の摂取量を減らす(【IN】を減らす)ことだけに偏らず、体から出す塩分を増やす(【OUT】を増やす)ことも取り入れて両面から進めるのが効率的というわけだ。

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