前向きに楽しく歳を取る「プロダクティブ・エイジング」の実現に向け、健康維持に有用なエビデンス(科学的根拠)を持つ食品“ニュートラシューティカル”事業を展開するNOMON(「NOMONが拓く『楽しく人生を全うする』未来」)。
NOMONの製品開発・製造の特徴は、40年にわたり帝人グループが培ってきた医薬品や医療機器のノウハウを生かした“安全性の高さ”にある。厳格な品質管理やトレーサビリティ(生産履歴の追跡)は医薬品と同レベルの安全・安心を実現する。
NOMONはどんな思想でニュートラシューティカル製品を世に送り出しているのか。実際の品質管理はどのように行っているか。NOMON代表取締役CEO(最高経営責任者)の山名慶氏と取締役COO(最高執行責任者)の狩野理延氏に話を聞いた(文中、敬称略)。
(聞き手:日経BP総合研究所副所長の藤井省吾)
医薬品、医療機器開発・製造のノウハウを生かす
帝人グループでは、活性型ビタミンD3製剤や骨粗鬆症治療剤、高尿酸血症治療剤などの医薬品や在宅医療機器などの研究開発・製造・販売をしてきました。そこで培われたノウハウの特徴はどのようなものでしょうか。
狩野 医薬品や医療機器を世に生み出すには長い年月がかかり、その間に様々なハードルがあります。素材となるシーズ(種)を見つけ、研究開発し、それを販売にまで結びつける。その間にまず必要なのは、有望なシーズを見出す“目利き力”。それを研究、開発し、適切に評価する力。お客様に安心・安全に製品をお届けするための品質管理力。さらには商品の魅力を伝えるための知識と経験も求められます。
帝人グループの特徴は、これらの一連の流れを、川上から川下までに携わる人間が、様々な経路で情報を収集しながら有機的につながることができる土壌が備わっていることです。例えば全国のMR(医薬情報担当者)は、在宅医療チームとも関わります。そこで上がってきた生の情報を研究開発スタッフと話し合うことも日常茶飯事で、知と知のイノベーションが生まれやすい環境が整っていることが大きな強みだと言えます。
NOMONは昨年、老化の抑制が期待できるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を含むサプリメントや、抗酸化作用があるわさびスルフォラファンを含むサプリメントを発売しました。これらの研究開発の過程で、帝人のヘルスケア事業で培ったノウハウはどう生きましたか。
狩野 NOMONの研究開発は長年、帝人グループで医薬品に携わってきた人材が中心となって進めています。ニュートラシューティカルの研究開発では、その知識や経験を直接的に生かせました。
例えば、NMNは摂取すると体内でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という物質に変わります。NADはすべての細胞においてエネルギーを生み出し、老化を制御するために必要な物質ですが、加齢とともに急激に減少してしまいます。NMNを摂取すればそのNADを補充できるので、老化を抑える効果が期待できます。医薬品の研究開発に携わっていた私たちだからこそ、NMNがいかに素晴らしい成分かという目利きができ、老化抑制に有望であることを理解し、サプリメントとして製品化できたのだと思います。
山名 帝人グループが手掛ける医薬品は、活性型ビタミンD3製剤や、免疫グロブリン製剤など、もともと体の中にある成分を応用したものが多いのが特徴です。このような医薬品の開発で、体が利用している栄養素を応用する研究をしていたから、NMNの存在に気づいたと言えます。

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