うつ病などの気分障害の患者数は全国で100万人を超えており、ビジネスパーソンにとって大きな健康問題です。この連載では、東京のビジネス街で精神科クリニックを開業する五十嵐良雄医師が、多くの患者さんを診た経験から、ビジネスパーソンが陥りがちなメンタルの罠(わな)についてアドバイスします。

現代社会において「ストレス」を感じることは日常茶飯事です。そして、ストレスに長くさらされると胃が痛み出す、食欲が減退する、眠りが浅くなる…など、ストレス反応が表れ始めます。この状態が長く続けば、さらに状況は悪化してしまいかねません。そこで、前回(「ストレスから自分を守るためには、まず『敵』を知ること」)から現代ビジネスパーソンに必要なストレス対策についてご紹介しています。
ストレスの無い仕事や職場など、望むべくもない現代ビジネスパーソンにとって、必要なのは「事前の対策」です。ツラい、しんどいと感じてから「まずい、どうしよう?」と対策を考えていたのでは遅いのです。回復に時間がかかってしまいかねません。そこで、前回に続き今回も、当クリニックの「リワークプログラム」で実際に行っているストレス対策方法の中からご紹介します。
「リワークプログラム」とは、うつと診断されて会社を休職したビジネスパーソンの皆さんが、復職して同じような環境に戻っても再休職せずに働き続けられるよう、休職中にさまざまなノウハウを身につけるためのプログラムです。このプログラムの中で実際に行われている「ストレスマネジメント」の内容は、皆さんにきっと役立つでしょう。
今回、ご紹介するのは「ストレスは、それほどダメージを感じていなくても、毎日コマメに発散、解消しておく」という手法です。
ストレスは自然には解消しない
前回は、まず自分が職場や仕事の場面で、具体的に、どういうことにストレスを感じるか、自分が苦手なストレッサー(ストレス反応が起きる原因)を明らかにする方法をお伝えしました。
では、ストレスを受けてしまったらどうすればよいか。仕事が原因で生じたストレスは、同じように仕事をしている限りたまっていきます。しかも、ストレスは自分の時間の中でしか解消できません。仕事を続けていてストレスが自然に解消するのであれば、仕事を続けるとより健康になるということですが、このようなことは到底考えられません。つまり、仕事以外の自分の時間を自分のために使って、解消するしかありません。例えば運動や好きな音楽を聴くということは、良いストレス解消法です。当然、ストレス解消の結果は自分に戻ってきます。ですから、自分のために有効なストレス対策を考えることが大事です。
今回はまず、ストレスによるダメージを感じていなくても、毎日コマメに発散、解消しておく「ストレス対処法100選」という方法を紹介します。