長期化するひきこもり、心の病気との関係は? 理解と解決のカギ
まずは家族相談を受けてくれる公的な機関に相談を
及川夕子=ライター
前回記事では、ひきこもりとは「半年以上社会参加していない、精神疾患ではない、外出していても対人関係がない“状態”を指す言葉」であると紹介した。斎藤さんは、ひきこもっている人を、何らかの理由で「たまたま困難な状況にあるまともな人」と表現する。しかし、長期化すればするほど、家族の側にも焦りや後悔の念が重くのしかかる。「本当は病気なのではないか、何か治療が必要なのではないか」と、疑念が湧いても不思議ではない。第2回は、ひきこもりと心の病気との関係について伺っていく。
ひきこもりは心の病気ではない?
親御さんの中には、外部にアドバイスを求めて話し合うなど、様々なことを試してきた方もいらっしゃると思うのです。しかし、「解決には至らずここまで来てしまった」「どうしたらいいか分からない」というのが本音ではないでしょうか。親御さんの中には、「何らかの精神疾患が関係しているのではないか」「医療機関を受診させたほうがいいのではないか」と思い悩んでいる方も少なくないと思いますが、そもそも、ひきこもりは病気ではないのでしょうか?

斎藤さん 先に述べたように、ひきこもりそのものは社会参加をしない「状態」を指す言葉であって、必ずしも治療を必要としません。「不登校」が診断名ではないのと同様の理由です。ただ、当事者にとっては抜け出せない苦しみを抱えていたり、家族にとっては経済的にも精神的にも負担になったりするので、放置していい問題ではありません。私が考えるひきこもりの問題は、精神・身体・社会など複数の領域にまたがる諸問題の総称であり、「ひきこもり関連障害」として理解することが適切ではないかと思います。
ひきこもりが長期化してくると、二次的な精神症状や問題行動が出ることがあります。症状は多彩で、抑うつ症状、不眠、強迫症、「いじめ後遺症」として起こる対人恐怖(自己臭恐怖、醜形恐怖を含む)、家庭内暴力、摂食障害などが挙げられます。2010年の厚生労働省研究班の報告では、ひきこもり当事者の80%に精神障害があるとされており、病気と無関係とは、なかなか言えません。これらを解決するためには、専門の医師やカウンセラーによる治療が必要になることもあります。

私の経験から申し上げると、ひきこもりに関連する精神症状や問題行動の大半は、他人の介入や家庭環境の変化で大きく変わります。ひきこもりは困難な問題ではありますが、治療自体はそれほど難しいわけではありません。
病気が隠れていないかどうか、家族が見極めるポイントはありますか?
斎藤さん 例えば、ひきこもっているだけでなく、幻聴、被害妄想などがあれば、統合失調症が疑われます。ほかに誤診されやすいものとして、発達障害があります。最近は、周囲とのコミュニケーションが難しいというだけで、すぐに発達障害ではないかと疑われる傾向にあります。しかし、ひきこもりの状態は他の精神症状と似ているだけに、誤診も起きています。見分けるには、経過の違いなどに目を向ける必要があり、専門家でも鑑別診断は簡単ではありません。
そうなると、親は誰を頼ればいいのでしょう? 本人が病気と認めたがらない。そもそも会話が成り立たないような親子関係では、いきなり治療を受けさせるのは難しいですよね?