“生涯健康な脳”を維持する! 「脳の活性化」3大鉄則
第3回 集中力、やる気、記憶力…… 脳を働きやすくする生活習慣
田村 知子=フリーランスエディター
「人の名前が思い出せない」「集中力が続かず、仕事がはかどらない」「若い頃のように意欲が湧かない」など、加齢とともに「脳力」の衰えを感じている人は多いだろう。だが、何歳になっても脳機能を成長させることはできるという。では、どんな習慣が脳の力を衰えさせ、逆にどんな習慣が脳に良いのか。前回は、「脳力」の低下を招く3大要因とその対策について解説した。本特集の最終回となる今回は、「脳力」を活性化し、生涯にわたって健康な脳を維持するための3つの生活習慣について紹介しよう。
脳を活性化させるためには、良い刺激を与えることが大切
加齢とともに、記憶力や集中力、意欲の衰えを感じる人は少なくない。それに加え最近は、コロナ禍の影響で仕事や生活のスタイルが大きく変わり、複合的なストレスが高まっていることで、一層の「脳力」低下を感じている人は増えているのではないだろうか。東北大学加齢医学研究所教授で、脳医学者の瀧靖之さんが本特集の第2回でも指摘している通り、「ストレス」は「脳力」を低下させる大きな要因の1つだ。
そのほか「脳力」を低下させる生活習慣に「タバコ・酒」「肥満」がある。それらをやめる・減らすことが脳の機能低下を抑えたり、改善したりするうえで大切なのは言うまでもない。だが、こうした3大要因をなくすだけでは、脳の機能を活性化するには不十分だ。脳は基本的には加齢とともに老化するため、大人になっても「脳力」を活性化し、健康な脳を維持し続けるためには、加齢によって衰えてきた脳に刺激を与えていくことが重要だ。
瀧さんは、「近年の脳科学研究により、脳の活性化を促し、将来的な認知症のリスクを下げる方法が明らかになってきています」と話す。今回は、その中でも特に有効な、脳を活性化する3つの生活習慣を紹介する。それはすなわち、「好奇心」「有酸素運動」「コミュニケーション」を心がけることだ。

これらの3つの生活習慣がなぜ脳を活性化させるのか、1つずつ瀧さんに解説していただこう。
脳を活性化する生活習慣(1)好奇心を持ち続けること
まず1つ目の「好奇心を持ち続けること」について。なぜ好奇心を持つことが大切なのか。それを理解するには、脳がどんな時に働きやすくなるのかの仕組みを知る必要がある。
瀧さんは、停滞した脳を活性化させる仕組みには、いくつかのキーワードがあると話す。1つは前回にも触れた、感情を司る領域の「扁桃体」。もう1つは、扁桃体の働きによって分泌される神経伝達物質の「ドーパミン」。そして、ドーパミンが分泌される神経回路を指す「報酬回路」だ。
扁桃体は、目・耳・鼻・口・皮膚の五官(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感)から大量の情報を受け取り、取捨選択する役割を担っている。情報をえり分ける際に基準となるのが、「快・不快」「好き・嫌い」「面白い・つまらない」といった、相対する「感情」だ。