中高年の「目の3大病」、予防のカギは定期的な眼科検診と自己チェック
第3回 異常を感じなくても、年に1度の眼底検査を
梅方久仁子=ライター
年齢とともにかかる人が増える目の病気である緑内障や加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)は、一度落ちてしまった視力や見え方の異常を劇的に回復させることは難しい。早期に発見して、さまざまな治療を行うことによって、残っている視力や視野を維持し続けることが大切だ。一方、多くの高齢者がかかる可能性のある白内障は、手術で見え方はほぼ回復するものの、定期的に目の状態を知ることは重要だ。
大切な目を守っていくためにも必要な定期検査やセルフチェックについて、それぞれの目の病気別に詳しく紹介していこう。

40~50代以降に多く、中高年の失明の原因ともなる緑内障、加齢黄斑変性。そして、年齢を重ねれば多くの人がかかる白内障。特集第1回では、加齢とともに忍び寄る代表的な目の病気として、これら3つの疾患の成り立ちや、発見が遅れがちな理由を紹介してきた。第2回では、これら3大疾病の治療法の最新事情を紹介した。最終回となる第3回では、眼底検査などの定期検査を受ける重要性や、セルフチェックについて、引き続き井上眼科病院(東京都千代田区)院長の井上賢治さんに聞いていく。
自分では気付きにくい目の病気を早期発見するには、定期的な健康診断が重要だ。
「40歳を過ぎたら、眼科検診をぜひ受けてください」と井上眼科病院院長の井上賢治さんは勧める。「職場の健康診断などに眼底写真撮影が入っていれば、それでかまいません。眼底写真を見れば、緑内障と加齢黄斑変性の疑いがないかがわかります。もし白内障があれば濁った水晶体に遮られて眼底がうまく写らないことがあります」。

眼底写真撮影は、目の奥の網膜や視神経の状態を調べる眼底検査の一種だ。眼底検査はどこを詳しく見るかによっていくつかの種類があるが、健康診断では眼底写真撮影がよく行われる。
眼底写真撮影は、職場の健康診断で実施することも多いが、必須項目にはなっていない。人間ドックの場合は、日本人間ドック学会の基本検査項目に入っているので、たいていの医療機関で実施しているはずだ。自分が受けている健康診断に眼底検査が入っているかを確認して、もし入っていない場合は、眼科クリニックなどで相談しよう。
健康診断では、眼底写真撮影のほかに眼圧検査を行うこともある。眼圧の高さは、緑内障のリスク要因のひとつであり、定期的に測定することには意味がある。ただし、正常眼圧でも緑内障は発症するので、眼圧が正常範囲内だから安心とは言えない。また、加齢黄斑変性のチェックは眼圧測定ではできない。眼圧測定をしていても、別途眼底検査は受けておこう。
「ともかく40歳になったら眼底検査を受けてみてください。それで問題がなければ、次は1年後で大丈夫です。もし、もう少し頻繁に見ておいた方がよい兆候があれば、医師の判断で『何カ月後に来てください』と勧められると思います」(井上さん)。

近年、OCT(Optical Coherence Tomography:光干渉断層計)という検査機器が普及して、網膜の断面をより詳しく調べられるようになった。OCTは赤外線を眼底に当てて反射した光をもとに網膜の断面を読み取るもので、いわば目のCTともいえる。眼底検査ではよくわからなかった網膜や視神経線維層の厚みなどがわかるので、日本人の失明原因1位で視神経が損傷され視野が失われる緑内障や、50歳以上の男性に多く、近年増加傾向にある加齢黄斑変性の早期発見や経過観察がしやすくなった。
「OCTの登場で、緑内障と加齢黄斑変性の診断能力は、かなり上がりました。眼底写真でちょっとあやしいと思ったらOCTで調べると、やはり人間の目で見るよりもよくわかります。そして例えば1年後に同じ検査をすると、進行しているかどうかが、はっきりわかります。わずかな違いがわかるので、経過観察にも便利です」(井上さん)。