失明の危険もある、本当は怖い中高年の「目の3大病」
第1回 早い人は40代から白内障を発症、緑内障は40代以上の5%
梅方久仁子=ライター
人間の体は老化と共に様々な病気にかかりやすくなる。目も例外ではないが、多少見えにくさを感じても、命には関わらないからと、無頓着になっていないだろうか。もし視力が極端に衰えれば、日常生活もままならなくなる。快適に暮らしていくためには、視力の維持は重要だ。
本特集では、目の病気の中でも特に40代以降に多い、緑内障、加齢黄斑変性、白内障を中心に、病気の原因、症状、治療法、予防法、早期発見法などを紹介していく。

40代から50代になると、老眼で近くが見えづらくなってくる。そろそろ老眼かなと不便を嘆くことはあっても、多くの人は失明の危険までは考えないに違いない。
ところが、中高年の中途失明のリスクは、案外高い。
「40代から目の病気は増えてきます。40歳以上の5%は緑内障、50歳以上の約1%は加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)を発症しています。そして、年齢が上がるにつれて、これらの病気にかかる人は増えていきます」と語るのは、グループ5施設で年間1万2000症例の目の手術を手がける、日本有数の眼科病院である井上眼科病院(東京都千代田区)院長の井上賢治さんだ。
緑内障や加齢黄斑変性は、放置していると失明するかもしれない恐ろしい病だ。5%というと、実に20人に1人が失明の危機にさらされていることになる。ところが、多くの人は、なかなか自分の目の不調に気づいていない。
「高齢者に多い白内障も、実は早い人は40代から始まり、50代で5~6割の人がすでに発症しています。これも年齢とともに増えていき、80代ならほとんどの人が白内障になっています」と井上さん。白内障は軽症の間は目のかすみや少しものが見えにくくなるなど、老眼や疲れ目の症状に近いため気づきにくい。また手術で視力が回復するため、緑内障や加齢黄斑変性と比べると失明の危険は少ないものの、放置していると生活に支障が出たり、ケガのもとになったりしかねない。
大半の人は年を取るとなんらかの目の病気から逃れられない。中高年だから見えにくいのは老眼だろうとあきらめてしまい、放置しておくことは、より重要な病気のサインを見逃してしまう可能性があり危険だ。目の病気について適切に対処できるように、危険なサインを知っておくことは大切だ。
まずは、日本人の失明原因を知っておこう。
中途失明原因2位の糖尿病網膜症は名前の通り糖尿病が原因で起こり、3位の網膜色素変性症は遺伝性の病気だ。今回の特集では加齢によって発症し失明原因となる1位の緑内障、4位の加齢黄斑変性、さらに日本では失明に至る人は少ないものの加齢による発症者が多い白内障を取り上げる。
「緑内障や加齢黄斑変性は、末期の段階で見つかると手の打ちようがなく、失明してしまうことがあります。白内障も、気づかずに我慢していると生活の質を下げてしまいます。早い段階で見つけて治療をして、不自由さを感じるほど悪化しないまま一生を過ごしてほしい。それが、眼科医としての願いです」(井上さん)。
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