脊柱管狭窄症の痛みを和らげる「セルフケア三種の神器」
第2回 歩くと痛い脊柱管狭窄症は、重心を正しく戻して進行を抑える
田中美香=医療ジャーナリスト
歩くと足が痛み、休み休みでないと歩けない…。背骨の変形やヘルニアなどが原因で起こる「脊柱管狭窄症」は、年齢が上がるほど増えていく病気だが、40代、50代でも決して無縁ではない。「新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で、患者の若年化が進んでいる印象があります」と清水整形外科クリニック院長の清水伸一さんは語る。特集第2回となる今回は、脊柱管(せきちゅうかん)狭窄症の進行を抑える効果がある「セルフケア三種の神器」、体の使い方・ケア・体操の3つについて聞いていこう。
加齢は止められないが、姿勢や体の使い方は今から変えられる!
長い梅雨や猛暑が終わり、ようやく到来したスポーツの秋。だが、ステイホームでなまった体を動かそうとしても、思わぬ足の痛みのために運動できないこともある。足の痛みの原因はさまざまあるが(第1回参照)、運動不足や姿勢の乱れが原因で起こりやすいのが、脊柱管狭窄症と足底筋膜炎(足底腱膜炎)だ。
脊柱管狭窄症は、背骨にある「脊柱管(せきちゅうかん)」と呼ばれる神経の通り道が、背骨の変形やヘルニアなどが原因で狭くなったもので、中を走る神経が圧迫されて、腰から足先にかけての痛みやしびれ、感覚異常などが生じる。特に目立つのが、「歩くと足が痛んで歩けなくなり、少し休むと良くなるが、歩きだすとまた痛む」という、間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれる症状だ。

脊柱管狭窄症には加齢が大きく影響するため、50代あたりから症状なく進行し、60代以降に痛みやしびれが出てくることが多い。「いったん変形した背骨を元に戻すことは難しいため、脊柱管狭窄症と診断されると、このまま自分は歩けなくなるのか、と絶望してしまう患者さんも少なくありません」と、脊柱管狭窄症などの足の痛みに詳しい清水整形外科クリニック(さいたま市)院長の清水伸一さんは話す。
清水さんは脊柱管狭窄症に悩む患者を3000人以上も診療してきた整形外科医。「加齢現象で脊柱管が狭くなるのは仕方ありません。でも、体の重心を正しい位置に戻せば、ある程度は進行を抑えることができ、予備軍の人は発症予防につながります。体の使い方を見直してケアや体操を続ければ、手術に匹敵する効果が得られることもあります」と清水さんは言う。
セルフケア「三種の神器」で日常生活に支障がなくなる人も
脊柱管狭窄症の症状は、人によって千差万別だ。脊柱管狭窄症は下図のように3つのタイプがあり、神経根型なら左右どちらかの足だけに症状が現れるが、馬尾型・混合型では両側に現れるなど、症状が出る場所が違う。馬尾型では頻尿や残尿感、尿漏れなどの排尿障害を伴うことがあり、状態によっては手術の必要も生じる。
また、どのあたりの脊柱管が狭窄しているのか、1カ所なのか多発しているのか、痛みの程度はどのくらいかなども個人差が大きい。軽い症状なら手術を受けなくても、痛み止めの薬やリハビリ、さらにセルフケアを続けて改善することもあるという。手術にはいくつかの術式があるが、基本的には神経を圧迫している骨や靭帯、ヘルニアなどを取り除き、痛みや排尿障害を軽減することを目的とする。ただ、完全に症状がなくなるわけではなく、しびれなどが残ることもある。
