インフルとコロナの“同時流行”はあるか? 医師が警鐘
第3回 冬に感染症が流行しやすいのはなぜ?
日経Gooday編集部
新型コロナウイルス感染症の対策として出されていた緊急事態宣言が全国で解除されてから4カ月半が経ち、国内での累計感染者数は8万人を超えた。コロナとの闘いは長期化を余儀なくされ、今年の秋から冬にかけては、インフルエンザとの同時流行も懸念されている。
今回は、呼吸器内科医で『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)という著書を出した池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんに、コロナとインフルの同時流行という未曾有の事態にどう備え、日々の予防にどう取り組めばいいのかを聞いた。
コロナとインフルの同時流行はあるか?

前回、呼吸器内科医の大谷義夫さんの後輩で、新型コロナウイルスに感染した医師の体験談をお届けした。
「集中治療室に入り、人工肺(ECMO)が必要なほど重症化した人の闘病記は貴重だと思います。50代前半の男性で、基礎疾患はなく、喫煙歴もありませんでしたが、そこまで重症化したのです。これは、若くて健康な人でも、コロナが人ごとではないことを表しています」(大谷さん)
2020年9月下旬の現在でも、日々数百人の新規感染者が出続けている。それどころか、秋から冬にかけては、さらに感染が拡大する恐れも指摘されている。
大谷さんの新しい著書『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)では、今後予想される「インフルエンザと新型コロナの同時流行」の可能性についても警鐘を鳴らしている。

「2009年の新型インフルエンザのときは、日本では、春や夏の第1波よりも、冬の第2波のときのほうが、大規模な流行となりました。新型コロナも、秋から冬にかけてさらに流行する可能性は否定できず、季節性のインフルエンザとの同時流行の対策も考えておかなければなりません」(大谷さん)
日本では、感染症は気温が低く、乾燥している季節のほうが流行しやすいともいわれている。それはどのような理由だろうか。
「理由はいくつか考えられます。まず、空気が乾燥していると、のどが乾燥しやすくなり、感染症の原因となるウイルスや細菌の侵入を阻む防御システムの働きが弱まること。寒い時期には密閉した空間に人が集まり、感染が起こりやすくなることなどが挙げられます」(大谷さん)
ほかに、医療体制における問題もある。2020年4月には、新型コロナ患者の治療のため医療がひっ迫し、ほかの病気の患者を十分に診療できない状態に陥るのではないかという懸念があった。インフルエンザと新型コロナが同時流行した場合、似たような状態になる恐れがあるという。
秋から冬にかけて懸念される感染拡大の要因
1
空気が乾燥してくると、のどが乾燥しやすくなり、病原体の侵入を阻む防御システムの働きが弱まる
2
寒くなると密閉した空間に人が集まり、感染が起こりやすくなる
3
新型コロナと季節性のインフルエンザが同時に流行すると医療がひっ迫する恐れがある
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