実録・新型コロナにかかった医師 集中治療室からの生還
第2回 CT画像で肺が“真っ白”に… 回復しても息切れの後遺症が残る
日経Gooday編集部
新型コロナウイルス感染症の対策として出されていた緊急事態宣言が全国で解除されてから3カ月半が経ち、国内での累計感染者数は7万人を超えた。コロナとの闘いは長期化を余儀なくされ、この感染症はある意味、私たちにとって身近な存在になりつつある。
今回は、呼吸器内科医で『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)という著書を出した池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんに聞いた、実際に新型コロナに感染した医師の衝撃的な闘病記をお届けする。

新型コロナに感染した医師の貴重な証言
「どんなに予防を徹底しても、感染してしまう人はいます」と、池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんは語る。
大谷さんのクリニックでは、2020年7月下旬以降、唾液によるPCR検査を実施できるようになったこともあり、毎日のようにコロナ疑いの患者を診察している。感染収束の糸口はまだ見えないが、前回、解説したように、新型コロナの治療についての知見がたまり、感染しても重症化せずに回復する人も増えている。
「誰しもコロナは怖いですが、正しい知識のもと、正しく恐れることが大切です。治療のノウハウはたまってきていますし、PCR検査が拡充されたので、軽症や無症状の段階で感染が判明する人が増えています。コロナがすぐに消えてなくなることはないかもしれませんが、うまく闘うことができるはずです」(大谷さん)
大谷さんは、クリニックでの診察という本業の合間を縫って、呼吸器内科医の立場から、現場の声をメディアで情報発信しており、新しく『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)という著書も出版した。その著書の中でもひときわ興味深いのが、実際に新型コロナに感染した医師の体験談だ。

「大きな総合病院で呼吸器内科医として働いている大学の後輩が、2020年3月に、病院内で新型コロナウイルスに感染し、集中治療室で2週間以上にわたって治療を受け、人工肺(ECMO)も使用し、もはや五分五分かという状況から奇跡的に生還しました。このときほど、この仕事が命の危険と隣り合わせであることを痛感したことはありません」(大谷さん)
3月といえば、新型コロナについて分かっていることも少なく、病院では医療用のマスクやガウンなどの物資が不足し、PCR検査も十分に行えなかった。そのような状況で、自らもコロナに感染し、人工肺が必要なほど悪化した後に回復したのだ。
今回は、その医師の体験談を紹介していこう。
「医療従事者ではない方には、新型コロナウイルスに感染してしまった医師の話というものは、あまり聞いたことがないでしょう。人工肺が必要なほど重症化した人の体験談ならなおさらです。また、新型コロナウイルス感染症が日本で流行し始めた時期の医療現場の証言としても貴重でしょう」(大谷さん)
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