コロナ患者を診る医師が明かす、診察・治療の最前線!
第1回 コロナ治療はここまで進んだ! クリニックでPCR検査が身近に
日経Gooday編集部
新型コロナウイルス感染症の対策として出されていた緊急事態宣言が全国で解除されてから3カ月半が経ち、国内での累計感染者数は7万人を超えた。コロナとの闘いは長期化を余儀なくされ、この感染症はある意味、私たちにとって身近な存在になりつつある。
誰もがいつ感染してもおかしくない状況だからこそ、実際にコロナの診察や検査、そして治療がどのように行われるのかについて、ぜひ知っておきたい。呼吸器内科医で、『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)という著書を出した池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんに解説していただこう。

どんなに予防を徹底しても、なぜ感染してしまうのか
新型コロナウイルスの感染予防のため、石けんを使った手洗い、マスクの着用、アルコール消毒のほか、人混みを避ける、混雑した飲食店には行かない、なるべく自宅で過ごす、出勤せずテレワークを行う、などの対策を取り入れた生活を、多くの人が半年以上にわたって続けている。
2020年7月後半以降には、“第2波”ともいえる感染の流行があり、9月に入ってからは次第に落ち着いてきたものの、新規感染者数は出続けている。この状況にいらだちだけでなく、あきらめを感じるようになった人も多いだろう。これから気温が下がり、インフルエンザの季節になると、高熱など似たような症状のインフルとコロナの同時流行も懸念され、注意が呼び掛けられている。

手洗い、マスク、消毒、ソーシャル・ディスタンシングなどの「新しい生活様式」を実践することで、社会全体として感染者数を抑えることができているのは間違いない。しかし、これでコロナの感染を個人レベルで完全に防げるわけではない。「どんなに予防を徹底しても、感染してしまう人はいる」と池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんは話す。
「石けんを泡立てて30秒かけて手を洗う、会社の中でも常にマスクをつける、ドアノブや電車のつり革に触らない、家の中でよく触れるところはアルコール消毒する…。こうした予防を、神経質なまでに実践していたのに感染してしまったという方は、私が診察した中に何人もいます。陽性が判明すると、『なぜ自分が』とがっくり肩を落とされ、本当に気の毒です」(大谷さん)
大谷さんのクリニックでは、7月下旬以降、唾液によるPCR検査を実施できるようになった。それもあり、毎日のようにコロナ疑いの患者を診察しているという。
「予防しても感染してしまうのは、仕方のないことですよね。私が今、心配しているのは、感染者差別です。先日、陽性が判明した方は、勤務先の人から『会社の人たちみんな、PCR検査しないといけなくなったじゃないか!』などと心ない言葉を浴びせられ、かなりひどい抑うつ状態に陥ってしまいました」(大谷さん)