新型コロナウイルスの「第2波」が心配。そんなあなたに、正しく恐れ、適切に予防するための新型コロナウイルス感染症の最新情報を2回に分けてお届けします。第1回「新型コロナの感染率、症状… 最新データで見えてきた特徴」では、国内での感染率が低いことに関する考えられる要因や、新型コロナウイルス感染症の症状などについて解説した。今回は気になる「抗体」や「第2波を防ぐためのウイルス防御策」について紹介する。
抗体の中には「善玉」「悪玉」がある
6月中旬に都道府県をまたぐ移動が全面解除され、感染者数も低下していた頃は、唾液PCRに抗原検査、抗体検査と新たな検査方法の導入も進み、このまま流行が収まるのでは……と期待を抱いていた人もいるのでは。だが、気を緩めるのはまだ早そうだ。
「現状の抗体検査は、感染後しばらくすると増えてくるIgGやIgMという抗体の有無を見るものだが、これでわかるのは過去のウイルス感染履歴だけ。抗体検査で陽性が出たからといって、もう感染しないというライセンスが与えられたわけではない」と大阪大学大学院医学系研究科の熊ノ郷淳教授。
「多くの人は、一度病原体に感染すると抗体ができ、しばらく同じ病気にはかからないと考えているようだが、実は、1種類のウイルスに対して体の中で作られる抗体は数十万もある。ウイルスの感染を防ぐ善玉抗体はごく一部。逆に感染を悪化させる悪玉の抗体や、まったく役に立たない抗体も多い」
つまり、新型コロナウイルスに対して有効な抗体が多くできていなければ再感染の可能性はあり、集団免疫も成り立たないという。また、「抗体の有無だけでは体内のウイルスが減ったかどうかまではわからない。PCR検査なども組み合わせながら現在の感染有無を評価する必要がある」(熊ノ郷教授)。


抗体に関する研究はワクチン開発においても重要な意味を持つ。ウイルスの中のどの部分が善玉抗体を増やし、どこが悪玉を増やすのかがわかれば、有効率の高いワクチン開発が可能になるからだ。
ただし、抗体産生能には個人差もある。「長年の研究を重ねてできたインフルエンザワクチンであっても、接種して有効な抗体を作ることができる人の割合は10代で6~8割程度。40代以降であれば、2割程度しか有効性を発揮できないというデータもある。抗体産生能の低い人の場合、感染履歴やワクチン接種が必ずしも十分な予防策にはならない。手洗いやマスクでの予防が必要だ」(熊ノ郷教授)。
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