健康診断は意味がない!? 健診の効果を改めて考える
ほんとは怖い 健康診断のC・D判定(第6回)
近藤慎太郎=医師兼マンガ家
「忙しかったし」「まだ元気だし」――。こんな言い訳をしつつ、健康診断のC判定やD判定を放置していませんか。そのままにしていると、「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「痛風」などに…。本連載ではこれらの病気が起こるメカニズムや症状、予防法などを、マンガも描ける医師・近藤慎太郎さんに解説していただきます。今回は健康診断やメタボ健診を受ける意味について、改めて考えていきたいと思います。
メタボ健診、保健指導の実施率はたったの17.8%
「何となくメタボ健診のことは分かった。でも、それをやって本当に効果があるの?」という人もいるかと思います。それについては、厚労省の『標準的な健診・保健指導プログラム 平成30年(2018年)度版)』に、開始10年の区切りで途中経過が報告されています。
「どれだけメタボが改善しているか」と思いきや、何と「糖尿病患者数の増加」「糖尿病予備軍の増加」「20~60歳代男性の肥満者の増加」などが認められていました。これには当然のことながら、「メタボ健診は状況を改善しておらず、有効ではない」という批判が方々から上がりました。
しかし、メタボ健診が始まってからまだ10年しか経っていません。そもそも生活習慣病を発症するリスクが高い人を見つけて予防しようという試みなので、その結果、発症率が下がって死亡率が下がるかどうかを確かめるには、20年、30年といったスパンで観察する必要があります(次回の評価は2022年以降)。現時点で結論を出すのは時期尚早だと思います。
とはいえ、このままの状況で推移すれば、おそらく「メタボ健診には意味がない」という結論になるでしょう。
なぜかといえば、厚労省の発表によると、メタボ健診の実施率は48.6%とまだまだ少なく、さらに保健指導の実施率も17.8%にすぎないからです(2014年度の実績)。健診に引っ掛かった人にきちんと保健指導までできて、初めて効果が期待できるといえます。ですが実際は、「指導が必要な人の5人に1人も受けていない」のです。
保健指導は3カ月以上の継続的な支援が求められており、受ける人はもちろん、指導する側の負担も相当なものがあります。十分な時間を確保するのが難しいので、実施率が低いのも仕方がないともいえます。
今後、何らかの抜本的な改革を断行しない限り、メタボ健診は尻切れトンボになってしまう可能性が高いでしょう。
「健診は全く意味がない」という衝撃の論文
次に、メタボ健診ではなく、一般的な健診というものにはどれほどの効果があるのでしょうか。これについては、オランダの有名な論文があります。
その論文は、対象者を健診を「受けるグループ」と「受けないグループ」にランダムに割り振り、経過観察したものでした。結果は両グループ間で、病気の罹患率も死亡率も差が出ませんでした。つまり、健診には「全く意味がなかった」という衝撃的な報告です(*3)。
この論文は、健診に否定的な人たちにとって金看板のようになっています。しかし、この論文にはいくつか疑問点があります。順を追って解説します。
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