「5人に1人が認知症」になる時代 予防につながる「普段の行動」とは
ほんとは怖い 健康診断のC・D判定(第3回)
近藤慎太郎=医師兼マンガ家
「忙しかったし」「まだ元気だし」――。こんな言い訳をしつつ、健康診断のC判定やD判定を放置していませんか。そのままにしていると、「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「痛風」などに…。本連載ではこれらの病気が起こるメカニズムや症状、予防法などを、マンガも描ける医師・近藤慎太郎さんに解説していただきます。
今回は、要介護の原因の1つ「認知症」について見ていきましょう。誰もが避けたい認知症ですが、ここにも動脈硬化が大きく関わっています。
「5人に1人が認知症」になる時代へ
脳卒中の次に、要介護のもう一つの因子である、認知症について解説します。
厚生労働省の調査によると、認知症患者は2012年の時点で462万人。その数は2025年に700万人を超え、65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると推計されています。
認知症の定義は「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断など多数の高次機能障害からなる症候群」です(国際疾病分類第10版より)。認知症はこれらの認知機能の低下をベースにして、攻撃的になったり、逆に自発性や意欲が低下したりすることがあります。
さて、定義はさておき、認知症のイメージは皆さんある程度は知っていることと思います。ここで注意したいのは、「慢性あるいは進行性の」という点です。認知症は原則的に後戻りしない病気で、回復するのは1%以下と報告されています。認知症をきたす疾患は色々ありますが、ダントツで頻度が多いのが、アルツハイマー病(67.6%)で、その次が血管性認知症(19.5%)です。単純計算すると、この2つだけで9割弱になります(実際には合併するケースもあります)。
認知症の初期症状は「物忘れ」です。何度も同じことを聞く、冷蔵庫に同じものが何個もある、料理の味付けがおかしい。ほかにも、仕事でミスが増える、物事を段取りよく進められない、よく知っているはずの場所で道に迷う、新しいことが覚えられない、過去のことが思い出せない……といった症状が初期によく見られます。
こう書くと、思い当たる節がある人もいると思います。「もしかしてうちの親は認知症なんじゃないか」「自分も認知症に一歩近づいているんじゃないか」と心配しているかもしれません。
この物忘れ、もしや認知症?
人間は加齢とともに認知機能が衰えて当然なので、「加齢に伴う物忘れ」と「認知症」は、通常は別のものとして考えます。
加齢に伴うものの場合、進行しないか、進行が見られても緩やかであること、病識が保たれる(「最近物忘れがひどい」と、自覚できる)こと、日常生活に支障をきたしにくいこと、などで鑑別されます。
そのほか、認知症だと思ったら、うつ病だったというケースも多く見られます。時に非常に紛らわしいのですが、認知症だと認知機能の低下を軽く捉えがちで、うつ病だと重く捉えがち、という違いがあります。