40代・50代から始める、骨を強くする筋トレ6選!
第3回 早い時期から骨密度を上げる運動を
伊藤和弘=ライター
骨が弱くなり、一定以上に骨密度が下がった「骨粗しょう症」になると、ちょっとしたことでも骨折しやすくなり、そのまま要介護状態や寝たきりになってしまうことも多い。いつまでも自分の脚で歩き、充実した後半生を過ごすには、早くから「骨を強くする」生活を心がけることが大切だ。骨粗しょう症に詳しい伊奈病院整形外科部長の石橋英明さんに聞く本特集。前回の「食事」に続き、最終回となる今回は骨を強くする「運動」の方法を紹介しよう。
早いうちに運動を始めるほど骨は強くなる
皮膚と同じように、骨は常に新しく作られている。第1回でも説明したように、骨の中にある破骨(はこつ)細胞が古い骨を壊し(骨吸収)、骨芽(こつが)細胞が新しい骨を作る(骨形成)。このバランスが崩れ、骨形成よりも骨吸収が多くなると骨の中のカルシウムやたんぱく質(主にコラーゲン)が過剰に溶け出していく。その結果、骨密度が下がり、骨が弱くなっていくわけだ。
一般に女性は閉経後、男性は60歳を過ぎたころから骨密度が下がっていく。年を取れば骨が弱くなるのも仕方がない。確かにその通りかもしれないが、ここで注意してほしいのは「骨は常に新しく作り替えられている」ということだ。筋トレをすれば筋肉を増やせるように、生活習慣の工夫によって骨形成を促せば、骨を強くすることができる。そして、早い時期から始めるほど効果的だ。
骨を強くする重要な方法が運動だ。伊奈病院(埼玉県伊奈町)整形外科部長の石橋英明さんは「実際、ウォーキングや筋力トレーニングなどの運動を続ける介入研究では、平均で骨密度が1~2%増えています。また、背筋運動を2年間続けると、10年後の骨密度の下がり方が少ないことも報告されています」と話す。

骨は力がかかると強くなり、力がかからないと弱くなる
骨の細胞は、骨にかかる力学的ストレス(重力や衝撃)を感じると、その力に負けないように骨芽細胞に骨形成を促す指令を出す。逆に負荷がかからない状態が続くと、「もう作らなくてもいい」という指令を出す。つまり、「力がかかると骨は強くなり、力がかからないと骨は弱くなる」――。これはウォルフの法則と呼ばれている。骨を強くするには、力学的なストレスが欠かせないのだ。
そのため、無重力状態で生活する宇宙飛行士や寝たきりの人は放っておくと急速に骨密度が減っていく。体重が少ないと骨粗しょう症になりやすいというのも同じことで、それだけ骨にかかる負荷が少なくなるためだ。
もちろん、太っていた方がいいということも一概には言えない。太っていると骨に負荷がかかって骨密度は保てるかもしれないが、一方で動きにくくなり、転倒しやすくなるので骨折のリスクも高くなる。閉経した日本人女性1614人を対象とした疫学調査から、BMI(体格指数:体重〔kg〕/身長〔m〕の2乗)が25以上の人は、背骨の椎体の圧迫骨折を起こすリスクが64%増えることも分かっている(*1)。
また、第1回で触れたように、糖尿病になると骨の“鉄骨”の部分に相当するコラーゲンが糖化によってもろくなり、骨粗しょう症になりやすくなる。肥満や糖尿病を防ぐためにも、早くから運動習慣を持っておくことは大切だ。
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