高血圧と糖尿病はどっちが高リスク? 認知症を避ける専門医の切り札
第2回 40代、50代から認知症のリスクが上がる? やるべき対策は?
二村高史=フリーライター
認知症にならずに元気に過ごしたいというのは、誰もが願うところだ。リスクをゼロにすることはできないが、研究が進むにつれ、年齢を重ねても認知症になりにくい生活習慣や食生活などが分かってきた。それでは、長年にわたって認知症に取り組んできた専門家は、自分の認知症予防のために、どんな生活を送っているのだろうか。日経Goodayでもおなじみ、認知症専門医の遠藤英俊さんに聞いてみよう。

前回、認知症専門医の遠藤英俊さんに、定年退職を機に認知症のリスクが高まってしまうケースについて解説してもらった。

会社に行かなくなって生活のペースが乱れ、通勤がなくなって運動不足になり、家に閉じこもってテレビばかり見るような生活を送っていると、認知症のリスクにつながってしまう。
「こうした事態を防ぐためには、仕事を完全にゼロにするのではなく、減らしたうえで続け、自由になった時間でほかに新しいことにチャレンジするとよいでしょう」と、遠藤さんは実体験を踏まえて説明してくれた。遠藤さんは実は、2020年3月に65歳で定年退職したばかりなのだ。
厚生労働省が発表した2018年の「簡易生命表」によれば、今65歳の人の平均余命は、男性が19.7歳、女性が24.5歳となっている。つまり、65歳で定年を迎えても、平均で20~25年は人生が残されているわけだ。
その長い時間を、認知症にならずに元気に過ごすためには、どのような対策が必要だろうか。引き続き、認知症の専門家である遠藤さんが、自分の認知症予防のために何をやっているのかをまとめた書籍『医師が認知症予防のためにやっていること。』(日経BP)を参考にしながら、話を聞いていこう。
認知症を引き起こす「9つのリスク要因」
認知症予防について考えるうえで、非常に重要な論文がある。それが、2017年7月にイギリスの医学雑誌『ランセット(Lancet)』が発表した論文だ。

「それによると、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めるさまざまな要因のうち、『自分次第で改善できる9つのリスク要因』が分かったというのです(Lancet. 2017;390:2673-734)。さらに、これらのリスク要因の『相対リスク』(リスク要因を持つ人が持たない人に比べてどれだけ認知症になりやすいか)と、リスク要因を排除できた場合の『人口寄与割合』(社会全体で認知症患者がどの程度減らせるか)を推計しています」(遠藤さん)