大腸がんリスクは「飲酒」「肥満」で上がり、「運動」によって下がる
第3回 食物繊維やカルシウム、魚も意識して摂取しよう
田中美香=医学ジャーナリスト
大腸がんがどのような原因で発生するのか、現在のところ詳細は明らかになっていない。しかし、大腸がんになるリスクを上げる要素・下げる要素が存在することは分かりつつある。今回は、大腸がんリスクに関する国内外の調査結果を基に、がん・感染症センター都立駒込病院外科部長の高橋慶一さんに詳しく解説してもらった。
大腸がんの発生リスクを確実に上げるのは、「飲酒」
現在、日本人の2人に1人は何らかのがんにかかるといわれている。そうなる前に予防できればいいのだが、あいにく「こうすればがんにならない」という絶対的なルールはない。
がん・感染症センター都立駒込病院外科部長の高橋慶一さんは、「そのことは大腸がんについても同様です」と話す。大腸がんは、新たにかかる人の割合(罹患率)が全がんの中で最も高く、死亡率は肺がんに次いで2番目に高いがん。今や日本で最もポピュラーながんの1つだ。
「すべてのがんは遺伝子の変異によって起きますが、他にもさまざまな要素が絡んでいます。そのため圧倒的な予防効果があるものはありません。それでも、近年がんになるリスク要因を分析した海外の報告が出され、ここ数年で日本国内でも研究が進んできました」(高橋さん)
日本人のがんリスクを左右する要因のうち、大腸がんについて分かっていることは下図の通り(国立がん研究センターによる)。今回は、何が大腸がんのリスクを上げたり下げたりするのか、国内外の調査結果を交えて紹介していこう。

まず、大腸がんの発生リスクを上げるものを見てみよう。下表のうち、唯一確実視されているのは「飲酒」だ。過剰なアルコール摂取は、大腸がんに限らず、多くのがんのリスクを上げることが分かっている(詳しくはこちらの記事を参照)。

「純エタノール量が1日23g未満なら影響しませんが、23gを超えるとあらゆるがんのリスクが上がってきます。もちろん大腸がんも同じです」(高橋さん)
純エタノール23gのアルコールとは、ビールでいえば大瓶1本(633mL)程度に当たる。この2倍以上の飲酒(46g以上)であれば約1.4倍、3倍以上の飲酒(69g以上)では約1.6倍もがんになるリスクが高まっていく。多量の飲酒でがんのリスクが高くなる傾向は性別を問わず見られるが、特に男性の大腸がんについて顕著だという(*1)。

飲酒が大腸がんと関係する理由は、アルコールの代謝産物「アセトアルデヒド」に原因があるとする説が有力だ。腸の中では、野菜に多く含まれる栄養素の1つ、「葉酸」が細胞の合成・修復を担っている。アセトアルデヒドが増えると葉酸の機能が邪魔され、遺伝子に何らかの変異が生じて大腸がんが起こる可能性があるという。
ただし、「飲酒が絶対にダメということではありません」と高橋さん。飲み過ぎると発がんの可能性が出てくるが、少量の酒をたしなむ程度なら問題はないということだ。今さら言うまでもないが、過剰な飲酒は決して体にいいものではない。お酒はほどほどにしておこう。