大腸がんの便潜血検査と内視鏡検査、どっちがいい? 何歳で受ける?
第2回 各検査のメリット・デメリットを知っておこう
田中美香=医学ジャーナリスト
大腸がんを調べる方法といえば、真っ先に頭に浮かぶのは、おなじみの検便、「便潜血検査」だ。この検査で陽性と判定されれば、二次検査として大腸内視鏡検査を受けるのがスタンダードな流れだ。しかし、どんな検査にもメリット・デメリットや、思わぬ盲点が存在する。今回は、大腸がんの有無を調べる検査の良し悪しを一つひとつ洗い出してみよう。
便潜血検査を毎年受ければ、大腸がんによる死亡は約6割減る
日本では年間5万人以上が大腸がんで亡くなり、大腸がんだと診断される人も増加の一途をたどっている。しかし、大腸がんは手術で治りやすく、抗がん剤も比較的よく効くため、生存率が高いがんでもある。早く見つけて治療をすれば、命を落とさずに済む可能性が高い。
前回はこんな大腸がんの現状について解説した。ここでその内容をコンパクトにまとめておこう。見ての通り、大腸がんは一見すると「怖いがん」のようで、実は比較的「おとなしいがん」でもあることが分かる。
ただし、「大腸がんの治療効果は高い」という恩恵を受けることができるのは、早い段階で発見した人のみ。そのためには、大腸がん検診を受け、症状が出る前の早い段階で大腸がんを見つけることが重要だ。今回は、大腸がんの有無を調べる検査にどんな特徴があり、どの検査をどのタイミングで受ければいいのか、詳しく解説していこう。
大腸がんの怖いところ
- 日本では年間5万人以上が大腸がんで亡くなっている
- 肺がんに次いで2番目に死亡率が高いがんである(男性3位、女性1位)
- 新たに診断される人の割合(罹患率)が一番高いがんである(男性3位、女性2位)
大腸がんに関する朗報
- 手術で治る可能性が高く、治療効果が高い
- 診断されてから5年後の生存率は全がんの平均より高く、70%以上である(Ⅰ期なら95%以上)
- 「便潜血検査」を毎年受け続けると、大腸がんによる死亡が約6割減ると推測されている
大腸がん検診の基本的な流れは下図の通り。一次検査として広く行われているのが健康診断でもお馴染みの「便潜血検査」、そこで引っかかった人が次のステップとして受けるのが「大腸内視鏡検査」だ。
便潜血検査は、便の表面をスティックでこするようにして検体を採取し、保存液に浸した状態で、連続する2日分を提出する検査だ。便が大腸を通過するとき、がんやポリープとぶつかれば出血し、便に血液が混ざる。その証拠となる、赤血球中のヘモグロビンを便から検出するのが便潜血検査の役割だ。極度の便秘の人は提出日に間に合わせるのに難儀するかもしれないが、痛みがなく、時間もかからず、負担のかからない点がありがたい検査だ。
その精度について、がん・感染症センター都立駒込病院外科部長の高橋慶一さんは、「便潜血検査は、非常に検出感度が高いのが特徴です。バスタブに入った1滴の血液も拾い上げるほどすぐれた検査です」と話す。
ある調査によると、便潜血検査を毎年受けると、大腸がんによる死亡を約6割も減らすことができると推測されている(*1)。便を提出するだけでそれほど効果があるのなら、この検査を受けないのはもったいないことだ。
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