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元自衛隊心理教官が語る 新型コロナ禍を乗りきる心理作戦

新型コロナで「もっとしんどい状況の人もいるのに…」

自責感が増すときは、「タスク系」を自分に課さないこと

 柳本操=ライター

「タスク系、理屈系」よりも「雰囲気系」で疲れをケア

消耗を加速させないために、今心がけたいのは、「不安感情を認める」のと同じように、「疲れた自分を認める」ことでしょうか。

下園さん そうです。しかも、すぐには回復できない、と知ることです。疲れ切ったとき、人間は何もできません。できるようになるまでは時間がかかるし、ある程度疲労がたまってしまった状態となると、ゆっくりとしか回復していくことができません。

なにか、日々取り入れられる習慣はありますか?

下園さん こういったときは、「タスクを課す」ことは避けたほうがいいです。それができなかったときに、より「自責」を刺激することになるからです。

 時間があるから語学学習をしようとか、家中をきれいにしようとか、うっかり考えてしまいがちですが、こういうときは「慣れた行動」のほうが集中でき、かつ気分転換になります。いつもやっていることで、楽しく集中できることは何かな? と探してみてください。

 ゆったりと自分をケアするときには、「タスク系、理屈系」よりも「雰囲気系」、と私は言うのですが、リラックスできる、脱力できるようなことがいいのです。音楽を聴く、心地よい布団にくるまる、ペットをなでる、ごはんをよくかんで味わう。猫の癒やし動画やお笑い動画もいいですね。10分ぐらいでコンパクトにできるリフレッシュがお薦めです。

心がざわざわしたときは、紙に気持ちを書き出すのはどうでしょう。

下園さん とてもいいですね。「何が今、一番不安なのかな」と自分に問いかけてみるといいでしょう。安心できる人とディスカッションしているのと同じような感じで、浮かんでくる気持ちをどんどん書き出すのです。

じつは、書き出す、ということを先日、やってみたのです。「これまで貯金をしてこなかったから今こんなに不安なんだ」とか「気持ちが沈んで、家族の盛り上げ役ができない」とか、自責がたくさん出てきました。書き出してみて、「盛り上げ役とか特に誰も期待してないよ」と自分で突っ込みました(笑)

下園さん そういったことも、表現してみないと気づきもしないで、じわじわと自分を責めているのですから、書くことの効果はそこにあるんですよ。

 感情は、一瞬のうちに恐怖や不安といった特性のイメージを抱かせて、そのイメージから離れられなくします。抽象的には、なかなか言葉が出てこないことがあります。

 しかし、取り出して見て、洗い出してみると、「その考えは、そこまで自分を持続的に消耗させる必要がないテーマだな」と気づいたりします。一人でずっと考えるより、書くことで、人と話しているような効果が得られる。書くことには、カウンセリングと同じような効果があります。

イラスト:朝倉千夏

 とはいえ、「今の悩みが100%解決する」というような、過大な期待はもたないこと。「まあ、たいしたことないかな、と少し思える」、「そこまで今、焦ることもないか」と思える、というふうに心のプロセスが少しだけ進むことに、効果の本質があります。そうやって感情をなだめることで、感情の勢いも、感情を抑え込もうとするエネルギーも節約できることによって、本来の冷静な思考が回りやすくなってきます

 今回お伝えしたことは、新型コロナ禍のような大きなストレス状況はもちろん、日常で疲れがたまったとき、イライラしたときなどにも共通して役立つ対処です。ぜひ、読んで「分かった気になる」だけにとどめず、行動に落とし込んで、その効果を確かめてみてくださいね。

まとめ

疲れは自責感を呼ぶ。新たなことはなるべく避けて、
慣れた日常を過ごして長期戦のエネルギー消耗を減らそう。

◇     ◇     ◇

 日経Goodayでは、6月初旬より下園壮太先生の新連載「元・陸上自衛隊心理教官が語る 人生後半戦 心のトリセツ」がスタート。人生後半戦を迎えた読者のみなさんに、さまざまな感情の取り扱い方をお伝えしていきます。ご期待ください。

(インタビュー写真:菊池くらげ)

下園壮太(しもぞの そうた)さん
心理カウンセラー
下園壮太(しもぞの そうた)さん 防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。心理幹部として多くのカウンセリングを手がける。大事故や自殺問題への支援を元に理論を展開。NPO法人メンタルレスキュー協会理事長。『自衛隊メンタル教官が教える 50代から心を整える技術』(朝日新書)など著書多数。

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