新型コロナで「この先いったい、どうなるの?」
行き詰まったときは「できること・できないこと」の切り分けを
柳本操=ライター
疲れがたまると、イライラする。傷つきやすくなる
「不安疲れ」「消耗疲れ」が、うつ状態を招くのですね。自分、あるいは身近な人がその状態かも、と察知するための目安はあるのでしょうか。
下園さん 疲労を感じても、疲れを自覚して、眠ることによって回復できる状態であればひとまず大丈夫です。心身のストレスは、生きている以上避けられませんから、休めば回復できる状態であることが、人間にとってはとてもありがたいことなのです(疲れの第1段階、と呼びます)。
ところが、疲れがたまってくると、一段階進んで、これまでと同じストレスでも、受けるダメージは2倍になり、回復するにも2倍の時間がかかるようになります。このような状態を私は「うつっぽい状態(疲れの第2段階)」と呼びます。うつっぽい状態では、自分にとって負担となる課題を避けるようになり、何かをするのがおっくうになり、イライラして、傷つきやすい状態になります。ただ、まだ表面的には頑張るエネルギーが残っているので、頑張り屋の人は、無理をして、いつも通りに振る舞おうとしてしまいます。「疲れているでしょう」と人から言われても、自分では認めません。しかし、そのまま疲れを麻痺(まひ)させていると、さらに進行して、「うつ状態(疲れの第3段階)」となってしまいます。
「うつ状態」になると、無力感、自責感、負担感が過剰になります。こうなると、傷つきやすさも疲れやすさも、元気なときの3倍になります。ダメージからの回復にも、3倍の時間が必要となります。うつになると、回復するまでには半年から1年間はかかります。
疲れを放置すると、知らないうちに、うつに向かってしまうのですね。
下園さん うつ的な性格になっていくのは、感情と同じメカニズム、つまり「自分の安全、命を守るための変化」ととらえてください。
イライラしやすくなるのは、それ以上、自分に負担を強要する人や危険な事態を近づけないようにするためです。難しい仕事を避けたがるようになるのは、それ以上のエネルギー支出を避けて自分を守るための、感情の働きなのです。人はどうしても、疲れの影響を知らないと、「やる気がない」「たるんでいる」というふうに自らを評価しがちですが、ほとんどが疲労、つまり、エネルギー不足の問題であることが多いのです。

子どもや、学生であっても、それぞれに不安や生活環境の変化によるストレスで、疲れています。「ずいぶんイライラしているなぁ」と気づいたら、叱る前に、疲れをためているせいではないか、と気遣えるようでありたいですね。疲れがたまっているときは、いつも以上に睡眠をとることが大切。いつもより1時間でも2時間でも多く眠るということを最優先にしてください。回復度合いは、全然違いますよ。
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