新型コロナで「何を信じていいかわからない」とき
拡大していく「不安感情」の正体を知り、情報のバランスをとる
柳本操=ライター
リモートワーク、休業、子どもの休校。そして日々更新される情報に振り回される負担感、度重なる予定変更、雇用は守られるのかという経済的な心配、医療崩壊――。自分が新型コロナウイルスに感染しているのではないか、あるいは目の前の人が感染しているのではないかという疑心暗鬼も加わり、誰もが息をひそめるように長期間の「不安」を感じ続けています。
下園壮太さんは、陸上自衛隊で心理教官として20年間、隊員達の心のケアに携わり、現在は心理カウンセラーとしてカウンセリングを続けています。
震災の災害現場や紛争地への派遣、自殺や事故のケアという過酷な現場で多くの人をメンタル面で支えてきた下園さんに、私たちが直面している新型コロナ禍という有事をどう乗り越えていけばいいのかを3回にわたって伺います。
第1回の今回は、「何を信じていいかわからない」――不安をかきたてる情報との付き合い方、自分を見失わないための考え方について。

「不安」をかき立てられ、ピークになっている
テレビのニュースも、ネットも、新型コロナの話題一色です。先行きが見えないいら立ちもあり、世の中が今後ますますギスギスしてくるようにも感じます。仕事や生活環境、経済状況も大きく変わり、考えなくてはならないことは山積みだけど、力が湧かない、そんな状態の人が多いのではないでしょうか。
下園さん 私のカウンセリングもオンラインに切り替わりましたが、やはり、うつ状態が悪化している人が多くいます。新型コロナという危機はまさに世界中の“有事”であり、「不安」という大変なストレスを私たちにもたらしています。
いつもは元気な人も、今は不安によって疲れがたまってきている。もうコップからあふれそうな状況の人も多いと察します。自責感や無力感も加わり、うつ状態になる人は、今後世代を問わず増えてくるでしょう。揺らいでいる心を支えるためにも、「不安」という感情の正体を知り、正しい取り扱い方で接することが必要です。

私は、感情というものを理解する考え方のベースとして、「全ての感情は、命を守るためにわき上がる」というふうにとらえているんですね。感情は全て、自らの安全、命の存続と、種の保存につながっている。それが本人にとっては迷惑で、早く消えてほしいと思う感情であったとしても、感情はその目的が果たされるまでは、騒ぎ続けます。
この視点で不安をとらえると、不安とは、「身に迫っている危険を感じ取り、なんらかの行動を促す感情」です。危険信号が入ってきたときに、準備するか、逃げるか、あるいはじっと洞穴に閉じこもるかといった「行動」につなげる、という目的を持った感情だと理解してください。
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