「座りっぱなし」3時間で余命が1時間縮む!?
第2回 死亡、肥満、糖尿病、心臓病、がん…「座りすぎ」は万病のもと
梅方久仁子=ライター
いすに座って作業をしたり、ソファに寝転んだりという、「座りっぱなし」の時間(じっとしてほとんど動かない時間)が長くなればなるほど、死亡リスクが高まり、健康に大きな問題が生じてくる――。早稲田大学スポーツ科学学術院教授の岡浩一朗さんへの取材を基に「座りっぱなし」の恐ろしさについて解説する本特集。第2回では、「座りっぱなし」によってどのような病気のリスクが上昇するかさらに詳しく見ていくと同時に、「座りっぱなし」の害を防止するポイントについても紹介する。

「座りっぱなし」の生活は、寿命を縮める
その人が普段の生活で、どの程度「座りっぱなし」なのかを正確に調べることは難しい。そこで「座りっぱなし」の1つの指標として、テレビの視聴時間がよく用いられている。立ったり歩いたりしながらテレビを見る人は、あまりいない。テレビを見ている時間が長ければ、「座りっぱなし」の時間も長いだろうというわけだ。
オーストラリアで25歳以上の男女8800人を対象にテレビの視聴時間とその後の死亡リスクを6.6年にわたり追跡調査した研究(*1)では、テレビを1日4時間以上見ている人は、1日2時間未満の人よりも総死亡リスク(あらゆる原因による死亡のリスク)が1.46倍高かった(図1)。心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)による死亡リスクに限ると、1.8倍にも増加していた。

この研究では、年齢、性別、喫煙状況、教育歴、食行動、摂取エネルギー量、余暇の運動量、胴囲、血圧、コレステロール値、服薬状況、血液検査のデータなど、さまざまな他の条件に影響を受けないように統計学的な調整を行っている。他の影響を極力排除した上で、「座りっぱなし」(テレビ視聴時間)による総死亡率に、これほどの違いが出た。
「このデータを基にした別の分析からは、『座りっぱなし』でテレビを1時間視聴するごとに平均余命が22分短くなるという結果(*2)も出ています。単純に計算すると、1日3時間テレビを見ていれば、1日1時間ずつ余命が短くなるということです」。岡さんはそう警告する。
この記事の概要
