医師500人に聞いた 「がん検診」で受けておくべきものは?
5大がんの死亡率を下げる「対策型検診」とは
日経トレンディ
新型コロナウイルスによるパニックが世界規模で拡大する中、改めて注目されているのが「正しい医療情報」の価値だ。「感染症」をはじめ、血圧などの「健康診断」の基準値、5大がんの死亡率を下げる「がん検診」など、氾濫する医療情報のうち本当に正しいものはどれか。今受けるべき医療、ムダな医療を現役医師に聞いた。
第2回となる今回のテーマは「がん検診」。胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんという日本の「5大がん」の死亡率を下げる「対策型検診」とは何か。今、受けておくべきがん検診の種類を、名医の意見と現役医師500人へのアンケート調査であぶり出した。
【現役医師アンケート調査概要】
「日経メディカル Online」(日経BP)に登録している医師にアンケートを実施。健康診断に関わる会員253人、がん治療に関わる会員266人からの回答を得た。日経メディカル Onlineは医師、薬剤師、看護師、医学生、その他の医療・医薬関係者を対象とした会員登録制(無料)のサイト。
■男女比:男性 483人/女性46人
■回答者内訳(複数回答あり):内科156人/循環器科46人/呼吸器内科31人/消化器内科43人/内分泌代謝内科・糖尿病科27人/腎臓内科22人/血液内科8人/老年科13人/総合診療科9人/泌尿器科17人/前出以外の内科8人/その他の科目11人

がんの統計データに異変が起きている。がん治療認定医の山本健人氏(京都大学大学院医学研究科消化管外科)によると、がんと診断される、すなわちがんに罹患した人の数(国立がん研究センターがん対策情報センターの2019年予測)では「これまで圧倒的1位だった胃がんを抜いて大腸がんがトップになった」という。胃がんの予防につながるヘリコバクター・ピロリ菌除菌の認知が進んだことや食生活の欧米化などがランキングに大きな変化を及ぼしているようだ。一方、がん死亡数(19年予測)は依然として肺がんがトップ。特に男性が肺がんで死亡する確率(累積死亡リスク)は17人に1人(約6%)と最も高い。
「対策型健診」は国が推奨する5つ
こうしたがんによる死亡を減らすために広く行われているのががん検診だ。ただ、ひとくちにがん検診といっても様々な種類がある。『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(日経BP)の著者で消化器専門医の近藤慎太郎氏は、「どれがいいか迷うのなら、取りあえず『対策型』のがん検診から考えればいい」と話す。対策型とは市区町村などが行う公的ながん検診で、罹患数が多い「胃がん」「肺がん」「大腸がん」「乳がん」「子宮頸(けい)がん」の5つのがんを対象としたもの。検診をすることでそのがんの「集団における死亡率」が減少するという科学的根拠がある検査だけが推奨されている。

受けられるがん検診は自治体によって異なることも
自治体が行うがん検診でも、住んでいる市区町村によってはその内容が異なる場合がある。厚生労働省の「市区町村におけるがん検診の実施状況調査」(2018年)によると、国が推奨する5種以外のがん検診を行うと回答した自治体は調査全体の約87%を占めた。

一方で「任意型」と呼ばれるがん検診は人間ドックなどで行われている検査で、個人の死亡リスクを下げることが目的。対策型のように公的な補助が無いため、基本的に全額自己負担となるが「任意型の中には受ける意味がある検査も多い」(近藤氏)という。
では、がん検診を賢く選択するにはどうすればよいのか。
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