糖尿病や肥満、認知症――全身疾患と腸内細菌の関連を解明すべく、世界中で腸内細菌の研究が進められている。本特集では、最新研究から見えてきたカラダと腸の深い関係を紹介していく。第2回では、知られざる「腸と脳の関係」などに迫る。認知症やうつ病などの人は、腸内細菌叢の多様性が低下し、バランスの乱れている人が多いことが最新研究から分かってきた。
認知症患者とそうでない患者では、菌のバランスに明らかな違い

厚生労働省の報告によると、平成20年度の認知症患者は約33万人、うつ病など気分障害患者が約104万人のところ、平成29年度では認知症が約70万人、気分障害が約128万人と、いわゆる精神疾患患者の数は年々増加の一途をたどっている。こういった脳の老化や疾患の対策が急かされる中、「脳腸相関」「腸脳軸」などといわれる両者の関連を調べる研究はここ数年のトピックとなってきた。
「以前から、うつ病や自閉症、認知症と腸内細菌に関連が推定されていたが、これらの患者には、腸内細菌叢の多様性が低下し、バランスの乱れている人が多いという報告が最近増えてきた」と齋藤名誉教授は話す。
例えば、国立精神・神経医療研究センターがうつ病患者を対象に行った調査では、うつ病患者には、ビフィズス菌や乳酸菌が少ない人がうつ病でない人に比べ多く、過敏性腸症候群(IBS)を有するリスクが高いことが示唆されたという。
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