肺炎で亡くなる人が増加中? 日本人なら気をつけたい対策とは
第2回 1年に13万人が肺炎で命を落とす! 怖い病気を防ぐには?
伊藤和弘=ライター
世界中で拡大が続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。この新しいウイルスに感染すると、風邪のような症状だけで済むこともあれば、肺炎を発症し、命を落とすこともある。不安は募るばかりだが、こうした状況で一番大切なのは、この感染症を正しく理解すること。特に「肺炎」については、誰もがその名前を知っているが、実態を理解している人は少ない。新型コロナウイルスに限らず、日本人は肺炎で亡くなる人が多い。どうすれば、この身近な怖い病気を防げるのか。池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんに解説していただく。

前回、世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、現時点で分かっていることを整理した。新型コロナウイルスに感染しても、8割は風邪のような症状だけで回復する。命を落とすことがあるのはウイルスが肺にまで侵入し、「肺炎」を起こしてしまった場合だ。
肺炎という病気は誰もが知っているが、その実態を正しく理解している人は少ないだろう。新型コロナウイルスに限らず、肺炎で亡くなる人はもともと多い。厚生労働省の「平成30年(2018)人口動態統計」によると、2018年の肺炎による死者数は9万4661人で、日本人の死因の第5位だった。肺炎の一種である誤嚥性肺炎(詳しくは後述する)も第7位に入っており、両方を合わせると13万3121人。これは、死因別に見た日本人の死亡数で、がん、心疾患に続く第3位の数になる。
肺炎を含む呼吸器疾患のエキスパートとして知られる池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんは次のように話す。
「医学の進歩で、がんが不治の病でなくなりつつある一方、肺炎で亡くなる人は増えています。肺炎で亡くなる人は、実は統計以上に多い。がん患者が肺炎を起こして亡くなった場合、死因はがんになります。心疾患にしても、気管支炎や肺炎を合併して心不全を起こす方が多いのです」
肺炎は、日本人にとって身近な怖い病気だ。特に、健康に気をつけ、長生きしてきた高齢者にとって、命を落とす可能性が高いのが肺炎だ。新型コロナウイルス感染症が拡大している今こそ、肺炎を正しく知ることで、将来の肺炎についても正しく恐れられるようにしたい。
肺炎をその原因や発症のメカニズムで分類する
前回も説明したように、肺炎とは「肺に炎症が起こる」病気だ。アレルギー性もあるが、多くは気道から侵入した細菌やウイルスによる感染症だ。
免疫が正常に働いていれば、細菌やウイルスを肺にまで入れてしまうことは少ない。気道には線毛という細かい毛が生えており、微細な異物をキャッチして押し出してくれる。また、「咳(せき)反射」といって、気道の表面にあるセンサーが異物を察知すると、脳は咳によって吐き出すように指示する。
「このような防御システムがあるため、通常、病原体は上気道(喉頭より上)で炎症を起こす程度で、なかなか下気道(気管から肺)まで入れません。特に自力で増殖できないウイルスは上気道炎、すなわち風邪をひかせる程度で、2週間以内に消えてしまうことが多いのです」(大谷さん)
しかし、のどの防御能力が低下して病原体が肺まで侵入したり、誤嚥によって細菌が肺に直接侵入したりすることで、肺に炎症が起こることがある。免疫力は年齢とともに衰えていき、一般に40代になると思春期の半分に、70代になると10%にまで落ちるという(Biotherapy. 2009;23(1):1-12)。高齢者が肺炎を起こしやすいのはそのためだ。