筋肉合成のスイッチを強く押すのは、どんな食事・運動?
第3回 アミノ酸のロイシンと筋トレが筋合成スイッチを押す酵素「mTOR」を刺激!
村山真由美=ライター
筋トレはスポーツのパフォーマンスアップや体型改善に欠かせないが、筋肉は長寿にも貢献することが分かってきた。しかし、「筋肉量を増やしたいからと、やみくもにたんぱく質やアミノ酸をとるのは効率的ではありません」と、筋肉の減少や肥大のメカニズムに詳しい立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡さんはいう。筋肉を効率よく増やすためには、筋肉合成のスイッチを入れるために、食事や運動に工夫が必要なのだ。
筋合成のスイッチを押す酵素「mTOR(エムトール)」

前回、筋肉を合成するには、成人男性は1日に65g(65歳以上は60g)、成人女性は50gのたんぱく質が必要という話をした(標準体重の場合)。
しかし、1日の総量がとれていたとしても、朝10g、昼10g、夜40gのように配分が不均衡だと、筋肉量が低下するリスクが高くなる。朝20g、昼20g、夜20gと3食均等にたんぱく質をとると「筋肉を合成するスイッチが強く入る」と立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡さんはいう。1食20gというのがポイントだ。
この「筋肉を合成するスイッチ」について、今回はさらに掘り下げて、藤田さんに聞いていこう。
「筋肉の合成には、細胞内のシグナル伝達物質のmTOR(エムトール)という酵素が関わっています。食事でとったたんぱく質が分解・吸収され、血中のアミノ酸濃度が高まると、mTORが作用して筋肉でのたんぱく質の合成が促進されます」(藤田さん)。
1食で20gのまとまったたんぱく質をとると、血中のアミノ酸濃度がググッと上がり、「筋肉を合成しろ」というスイッチが強く入る。これが1日3回繰り返されるのと、夕食1回だけなのとでは、作られる筋肉量に違いが出るというわけだ。
「必須アミノ酸のうち、筋肉の合成に深く関わっているのは分岐鎖アミノ酸(BCAA)ですが(*1)、なかでもロイシンの血中濃度がmTORに強く作用することがわかっています。また、筋トレなどの運動をすることによっても、mTORに刺激が入ります」(藤田さん)

「筋肉を作れ」というスイッチが入るのは、アミノ酸のロイシンと、筋トレなどの運動が関わっている。この2つについて詳しく見ていこう。
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