朝食でたんぱく質が不足している人は筋肉がつかない?
第2回 歳をとると「軽い朝食」ではダメ!
村山真由美=ライター
筋トレはスポーツのパフォーマンスアップや体型改善に欠かせないが、筋肉は長寿にも貢献することが分かってきた。健康長寿を目指す我々にとって、まさに「筋肉は裏切らない」のだ。しかし、「筋肉量を増やしたいからと、やみくもにたんぱく質やアミノ酸をとるのは効率的ではありません」と、筋肉の減少や肥大のメカニズムに詳しい立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡さんはいう。筋肉を効率よく増やすために食事でどのようにたんぱく質をとればいいのだろうか。
筋合成の落とし穴は「朝食のたんぱく質不足」

前回、筋肉量が少ない人は、多い人と比べて死亡リスクが高い、という話をした。加齢に伴って筋肉量が減り、それがやがてロコモティブシンドローム(運動器症候群)につながることはよく知られているが、それ以外にも、筋肉量が少ないと糖尿病や心疾患のリスクが高まったり、手術に伴う弊害や術後の回復が遅くなることが分かってきたのだ。
筋肉量を維持するためには、食事でたんぱく質をとることが重要だ。「日本人の食事摂取基準2020版」によると、たんぱく質の1日の摂取推奨量は成人男性65g(65歳以上は60g)、 成人女性50gとなっている。
男性65g、女性50gというのは、標準体重の場合。1日に必要なたんぱく質量は、活発な運動をしていない人は、体重1kg当たり0.8~1gが目安で、シンプルに1kg当たり1gとすると、体重50kgなら50g、60kgなら60gだ。たんぱく質60gは、肉や魚なら約300gに相当する。
日本人が実際にとっている量は、1日当たり男性78.4g、女性66.1g(「国民健康・栄養調査(平成30年)」より)で、平均では不足していない。しかし、これは平均値なので、摂取推奨量に達していない人も一定数いるはずだ。そういう人は、まず不足分を増やす必要がある。また、「総量は足りていても、朝昼晩の摂取配分が不均等だと筋肉量が低下するリスクが高くなります」と藤田さんは指摘する。
筋肉は絶えず合成と分解を繰り返していて、食後は「合成」が、空腹時は「分解」が進む。朝は、食事をとっていない時間が長く続いたあとなので、筋肉が最も「分解」に傾いた状態であり、速やかにたんぱく質をとる必要がある。朝食を抜くのはもってのほかだ。
朝食をとっている人も安心できない。日本人の食事は一般的に「朝・昼軽め、夜しっかり」で、たんぱく質の摂取が夜に偏っている人が多い。そこが落とし穴だ。
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