筋肉量が多いほど長生きするって本当? カギは30~50代の食事・運動
第1回 あなたの筋肉は大丈夫? ふくらはぎの指輪っかテストでチェック!
村山真由美=ライター
近年、空前の「筋肉ブーム」が続いている。スポーツのパフォーマンスアップや、体型改善のために筋トレに励む人も多いだろう。しかし、加齢によって筋肉量が減少すると、足腰が弱くなって寝たきりにつながるだけでなく、糖尿病や心疾患のリスクが上がることも分かってきた。長生きするためには、何よりも筋肉量を維持することが重要なのだ。加齢によって起こる筋肉量や筋機能の低下について研究している、立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡さんに、筋肉と長寿の関係について聞こう。
筋肉量が少ないと長生きできない!?

かつてないほどの「筋肉ブーム」により、筋トレに励む人が増えてきた。その目的の多くは、スポーツのパフォーマンスアップやダイエット、体型改善などだが、実は、筋肉量が多いと長生きできることが近年の研究で分かってきた。「筋肉量が少ない人は、多い人と比べて死亡リスクが高いという報告は多数あります」と立命館大学スポーツ健康科学部の教授である藤田聡さんは話す。
藤田さんは、加齢によって起こる筋肉量や筋機能の低下に焦点を当てたてた筋肉のたんぱく質代謝について研究している。年を取ると筋肉量が減り、それがやがて、ロコモティブシンドローム(通称ロコモ、運動器症候群)につながり、寝たきりのリスクが増す、という話は日経Goodayでも繰り返し紹介している。しかし、筋肉量が少ないと死亡リスクが高まるというのは、何もロコモに限った話ではない。
「例えば、病気やケガで入院、手術をしたとき、筋肉量が少ないと、手術に伴う弊害が起きたり、回復が遅かったりして、病院滞在期間が長くなります。また、筋肉量が少ない人は多い人に比べて術後の予後が良くないという報告はたくさんあります。そういう観点からも、筋肉量が多い人ほど長生きできるといえます」(藤田さん)
なぜ筋肉量が少ないと術後の回復が遅れるのだろうか?
人間の臓器や筋肉、皮膚などはたんぱく質からできている。そして、たんぱく質は、アミノ酸からできている。食事でとったたんぱく質が分解されてアミノ酸になり、それが体のたんぱく質を合成する材料になるが、一方で、体のたんぱく質が分解されたアミノ酸も、材料として再利用される。
「病気やケガで傷ついた部分を修復する際に、体は筋肉を積極的に壊してアミノ酸を供給します。筋肉量が少ない人が病気になったり手術した場合、アミノ酸を十分に供給できないため、修復が遅れたり、抵抗力が低いままでなかなか回復しない、ということが起こります。その結果として、予後が悪くなるのです」(藤田さん)
このほか、体が飢餓状態でエネルギー不足になったときも、体は筋肉をどんどん壊してアミノ酸を供給するという。「無理なダイエットをすると筋肉が減る」と言われるのはこのためだ。