筋トレはNG!? 尿酸値を下げる運動の鉄則
第3回 尿酸値を下げる運動、注意すべきポイントとは
伊藤和弘=ライター
健診結果で中高年齢層の多くが気にする「尿酸値」。基準値より高くなると、痛風リスクが高くなることはよく知られているが、近年の研究から、高血圧、糖尿病、腎臓病など、様々な病気に影響することが明らかになってきた。放置はNGだ。
ではどうすれば尿酸値を下げられるのだろう? 最終回となる今回は「運動のやり方」を中心に鳥取大学大学院医学系研究科教授の久留一郎さんに聞いていく。
尿酸値が基準値の7.0mg/dLより高くなった状態は、「高尿酸血症」という立派な“病気”だ。
高尿酸血症の人は、痛風リスクが高くなることはよく知られているが、それだけではない。近年の研究から、高血圧、糖尿病、腎臓病など、多くの生活習慣病のリスクを上げることが分かってきた。高尿酸血症は全身病なのだ。
だからこそ、尿酸値を放置してはいけない! これは、本特集で繰り返し解説してきた通りだが(第1回を参照)、ではどうすれば尿酸値を下げられるのだろうか。
その対策の柱である「食生活の改善」については第2回で詳しく解説した。最終回となる今回は、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』の改訂委員長を務めた鳥取大学大学院医学系研究科再生医療学分野教授・久留一郎さんに、引き続き「運動」面の対策などを聞いていこう。最後に、「薬物療法」の流れについても解説する。
尿酸を下げる運動、実は注意すべきポイントが!
一般に「健康的な生活習慣」といえば、食事と運動の2本柱なのは周知の通り。治療ガイドライン 第3版でも、「痛風・高尿酸血症の治療には、薬物療法の有無にかかわらず生活指導が重要」であるとし、さらに「生活指導は、食事療法、飲酒制限、運動の推奨が基本となる」としている。
今回は、この中から運動について紹介していくが(食事、飲酒については第2回を参照)、久留さんによると、運動習慣は尿酸値を下げるものの、実は運動自体に尿酸値を下げる作用があるわけではないのだと話す。

「(運動により尿酸値が下がる)一番の理由は運動によって体重が減ることにあります。体重を減らし、内臓脂肪を減らすことが尿酸値を下げることにつながるのです」と久留さんは解説する。
肥満を解消する(=体重を減らす)には、食事からの摂取カロリーを減らすとともに、体を動かして消費カロリーを増やすことが基本となる。多くの人が自ら経験しているように、たくさん食べて動かなければ、余ったカロリーは体脂肪になり、肥満につながる。
肥満解消に取り組む際には、食事だけでコントロールしようとせず、運動もセットで行うのが大事だ。食事の量だけを減らすと筋肉まで減ることにつながりかねない。筋肉が減れば基礎代謝が減り(安静時の消費カロリーが少なくなる)、リバウンドしやすい体になってしまう。
そして、筋肉が減ると、将来の寝たきりにつながるロコモティブシンドローム(運動器症候群:ロコモ)などのリスクも高まる。このほか運動は、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を改善するのはもちろん、がんの発症リスクを下げる効果も期待できる。
こうした背景もあり、運動といえば一般に「やればやるほどいい」(極端なやり過ぎを除く)というイメージがある。また、「ウォーキングなどの有酸素運動と筋トレを組み合わせた方がいい」(それぞれ詳しくは後述)などとも言われる。
ところが、尿酸対策においては、事情が多少異なるという。これはどういうことだろうか。
尿酸値を下げるには、肥満対策が大事!
前回も解説したが、尿酸値は肥満と深い関係がある。
肥満によって尿酸値は上昇しやすくなるが、その原因となるのが「内臓脂肪」の蓄積だ。つまり、尿酸値を下げるには内臓脂肪を減らすのが大事。そして、内臓脂肪を減らすために取り組んでいただきたいのが減量、いわゆるダイエットということになる。
実際、太っている人は1年間で体重を3%落とすだけで、尿酸値が下がることが確認されている(人間ドック. 2016;31:7-21.)。体重100kgの人なら3%はわずか3kg、70kgの人なら2.1kgなので、1年で落とすのは決して難しくないだろう。なお、短期間での過度なダイエットはかえって尿酸値を上げてしまう。無理に高い目標を掲げたりせず、まずは3%減を目標に「緩く」「長く」続けたい。
減量の基本は、摂取カロリーを減らし、消費カロリーを増やすことにあるのは周知の通り。前回紹介した食事面での対応と併せて、今回紹介する日々の運動習慣を継続していこう。