高尿酸血症は全身病! 次々と明らかになってきた“新たな”尿酸リスク
第1回 長生きしたいなら、尿酸値が高い状態を放置してはいけない!
伊藤和弘=ライター
「痛風」は誰もが避けたい病気の代表格。その原因が尿酸であることは広く知られているが、尿酸値が高くても何の自覚症状もないため放置している人も多い。
しかし、軽く考えてはいけない! 近年の研究から、痛風のみならず、様々な疾患の原因となることが明らかになってきた。本特集では、最新研究から見えてきた「高尿酸血症を放置するリスク」と、すぐに実践したい尿酸対策を3回に分けて解説する。
唐突だが、「尿酸値」が高い状態を放置していないだろうか。
多くの人がご存じのように、血中の尿酸値が高いと、「風が吹いても痛い」ともいわれる「痛風」(痛風関節炎)を起こすリスクが高まる。だから尿酸値は下げるべき――。それは間違いない事実だ。

だが、痛風になっていない人にとっては、いくら「痛い痛い!」と言われても、その痛さを体験してないと対策はとりにくいもの。しかも、「尿酸値が高くても自覚症状はなく、さらには全員が痛風になるわけではない」となれば、なおさらだ(詳しくは後述)。
だが、それでも尿酸値が高い状態を放置しておいてはいけない――。これが今回の特集で最もお伝えしたいメッセージだ。
なぜなら、尿酸値が高い状態は様々な病気のリスクを高めることが、近年の研究で次々と明らかになっているためだ。高血圧、糖尿病、腎障害、さらには心疾患のリスクを上げる要因であることが分かってきた。そして、ここ10年ほどの間に、それを裏付ける報告が続々と出ている。
尿酸・痛風のエキスパートで、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』の改訂委員長を務めた鳥取大学大学院 医学系研究科再生医療学分野教授の久留一郎さんは、「高尿酸血症による“全身の”疾病発症のリスク」について警鐘を鳴らす。

「高尿酸血症は一般に、痛風リスクの観点から局所的な関節の病気のリスクとして取り上げられることが多いですが、高尿酸血症は『全身病』です。現在、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、それに腎障害、心血管障害などとの関連性を指摘する報告が次々となされています。過剰な尿酸を各臓器の細胞が取り込んで、臓器障害が起こるメカニズムも明らかになってきています」と久留さんは話す。
最も典型的なのが腎臓に対する影響だという。「近年の研究から、尿酸値を下げることで腎臓を保護できることが明らかになりました。それを受け、2018年12月発行の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』では、腎臓を保護するために尿酸値を下げましょうという推奨文を世界で初めて出しました」(久留さん)
さらに、「尿酸降下薬を使った群と使わなかった群で比較検証した最新研究(2019年)では、尿酸降下薬を使った群は、脳血管疾患、心不全、動脈硬化性疾患、腎障害などの発症や死亡リスクが有意に低かったという報告も出ています(詳しくは4Pを参照)」(久留さん)
尿酸値が高い状態を放置してはいけない!

冒頭でも触れたように、痛風発作が起きない限り、高尿酸血症にはまったく自覚症状がない。どこかに痛みを感じることもないし、心身に目立った不調を感じることもない。そのため、尿酸値が高いことが分かってもついつい放置してしまいがちに…。
だが、この状態に歯止めをかけられなければ、尿酸値はますます高くなり、痛風になるリスクが高まり、さらには様々な病気のリスクが高まっていく。そんな高尿酸血症の真のリスクが明らかになってきた今こそ、これまで放置していた人も認識を新たにして、尿酸対策に取り組んでいただきたい。
詳しくは2回目以降で触れるが、尿酸対策は、他の生活習慣病の予防、さらにはがんの予防の対策とも重なるものも多い。実践すれば二重、三重のメリットが得られるといえる。痛風のリスクが下がるのはもちろん、多様な病気を遠ざけ、ひいては健康寿命が長くなることにつながるのだから、やらない手はない。
本特集は、最新研究で明らかになってきた高尿酸血症のリスクの実態と、尿酸値が高い人が実践すべき対策を、尿酸・痛風の最新事情に精通した久留さんに3回にわたって聞いていく。
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