内臓脂肪は簡単には落ちない―これは多くの人の誤解だった!
第1回 生活習慣病、がん、認知症のリスクを高める内臓脂肪の脅威
田中美香=医療ジャーナリスト
正月明けのこの季節、多くの人が抱く悩みといえば、年末年始の食べ過ぎと運動不足、そしてお腹にポッコリついた「内臓脂肪」ではないだろうか。「内臓脂肪は体に良くないらしい」ことは多くの人が認識しているが、痛くもかゆくもないので放置しがち。しかし、その影響は予想以上に大きく、近年の研究では、血管を傷めるのはもちろん、がんや認知症、頻尿などにも関係することが明らかになっている。本特集では、20万人以上の健康を見守ってきた予防医学のエキスパートに、内臓脂肪の正体と、その落とし方を詳しく聞いていく。
内臓脂肪は、日本人の体質が抱える最大の弱点だった!

平成最後の正月が明け、いつもの日常を取り戻しつつある今日この頃、皆さんいかがお過ごしだろうか。年末年始の食べ過ぎとゴロ寝による運動不足で、何だかお腹のお肉が重い…そんな人も多いことだろう。お腹回りにポッコリ増えたお肉の中にあるのが、誰もが嫌がる「内臓脂肪」だ。
内臓脂肪は、テレビや雑誌で取り上げられることも多く、「内臓脂肪は体によくないらしい」ことは読者の多くがご存じだと思う。実際、“メタボ腹”の人、特に働き盛りの男性などは、何とかしたいと思う人も少なくないはずだ。
とはいえ、内臓脂肪がたまって腹囲が増えても、痛くもかゆくもない。そのため、格好は悪いものの、多くの人はついつい放置しがちだ。
だが、内臓脂肪の影響はわれわれの想像以上に大きい。高血圧、脂質異常、糖尿病、心臓病や脳卒中はもちろん、大腸がんや乳がん、そして認知症にも影響することが明らかになっている。ここに中高年を悩ます頻尿や便秘、腰痛にまで関わっているとしたらどうだろうか。

さらに驚くべきは、「日本人は遺伝的に内臓脂肪がつきやすい」という事実だ。皮下脂肪は皮膚と筋肉の間の浅い場所につく脂肪で、内臓脂肪は筋肉のさらに下、内臓周辺の奥深い場所につく脂肪だ。詳しくは後述するが、太るとき、欧米人は皮下脂肪からつくのに対して、日本人は内臓脂肪からついていくという。
ベストセラー『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎)の著者で、20万人以上の人間ドック・健康診断を行ってきた内科医で予防医学のプロフェッショナル・奥田昌子さんは、「内臓脂肪は、日本人の体質が抱える最大の弱点です」と話す。
では、私たちはどうやって最大の弱点を克服すればいいのだろうか。本特集では、内臓脂肪をいかに効率よく落とすか、その極意を奥田さんに聞いていく。
内臓脂肪は実は減らしやすい! あきらめるのはもったいない
奥田さんは、日ごろ多くの受診者と接する中で、日本人は内臓脂肪について誤解していること、十分に理解していないことが多いと感じるという。
まず第一に、内臓脂肪に対する認識の甘さだ。奥田さんは、「内臓脂肪は生活習慣病のもとになるばかりか、認知症やがんなど、さまざまな病気に関与することが明らかになっています。それにもかかわらず、ほとんどの人は自分はまだ大丈夫だと思い込んでいます。内臓脂肪を落とさない限り、病気の進行は止められないのですが…」と警告する。
「糖尿病などの生活習慣病の患者さんを診療する際、私はカルテを数年前まで遡って見ています。『この人は5~6年前に手を打てたのではないか?』と思いながら調べると、ある時期から体重が増えていることが頻繁にあります。『ここが病気になるかどうかの分かれ道だったのではないか』『この時点で減量して内臓脂肪を減らしていたら病気にならなかったかもしれない』と思うケースがとても多いのです」(奥田さん)
