糖質不足はNG! たんぱく質だけでは筋肉貯金には不十分
第3回 筋トレを頑張っても栄養不足なら“残高”は増えない
二村高史=フリーライター
年を取っても寝たきりにならず、健康寿命を延ばすためには、「筋肉」が重要であることが分かってきた。自分の足で歩き、転倒・骨折を防ぐためには、50~60代からの「筋肉貯金」が大切だ。筋肉貯金を増やすためには、筋トレはもちろん、食事を中心とした生活習慣にも気を配らなければならない。近畿大学生物理工学部准教授の谷本道哉さんに教えてもらおう。
「筋肉貯金」について、近畿大学生物理工学部准教授の谷本道哉さんに教えてもらうこの特集も、今回で最終回となった。
前回は、筋肉を貯金するために「これだけはやっておきたい」というトレーニングを3つ紹介した。今回は、食生活を中心として、普段の生活で筋肉貯金のために注意すべき点について考えてみよう。
朝食にたんぱく質をしっかりとる
筋肉貯金にとって、筋トレと同様に大切なのが毎日の食事だ。栄養のとり方を誤ると、せっかく筋トレをしても筋肉の貯金が十分にできないばかりか、筋肉を減らすことにすらなりかねない。その一方で、日々の食生活を少し変えるだけでも、筋肉を増やす効果がある。
食事で最も意識したい栄養素は、「たんぱく質」だ。改めて言うまでもなく、たんぱく質は筋肉をはじめ、内臓や血液などを形づくる材料であり、その摂取量が多い人ほど、加齢にともなう虚弱(フレイル)やロコモティブシンドローム(運動器症候群)に陥りにくいという調査結果もある。

1日にとるべきたんぱく質の量は、特に活発な運動をしていない人の場合、「体重1kg当たり1g」が目安となる。つまり、体重60kgなら1日に60gが目安というわけだ。
たんぱく質をしっかり摂取するうえで気をつけてほしいのが、朝食だ。谷本さんによれば、昼食や夕食はたいていの人が足りているが、朝食では不足しがち。朝食はパンとコーヒーだけで済ませている人や、朝食は食べないという人も多いのではないか。
「1日の合計で足りていればいいのでは」と思うかもしれないが、たんぱく質は一度に多くの量を代謝できない。つまり、とりだめができないのだ。だから、例えば体重が60kgの人なら、1日に3回の食事で20g以上ずつ分けてとることが重要になってくる。