なぜ50代から筋肉貯金をコツコツするべきなのか?
第1回 筋肉不足で、寝たきり、心不全、脳梗塞のリスクも上昇
二村高史=フリーライター
年を取っても寝たきりにならず、健康寿命を延ばすためには、「筋肉」が重要であることが分かってきた。しかし、自分の足で歩き、転倒・骨折を防ぐために地道な「筋トレ」が有効だと言われても、「まだまだ大丈夫」と先送りしてはいないだろうか。「筋肉貯金」の提唱者である近畿大学生物理工学部准教授の谷本道哉さんは、50~60代から始めることに大きなメリットがあるという。
筋肉は、私たちの生命活動に欠かせない存在だ。筋肉があるからこそ、体を動かすことができるし、食べたものを消化することができる。そんな大事な筋肉だが、加齢とともにだんだんと衰え、量も減ってしまう。
年を取って筋肉が減ってしまうのは仕方がない。だが、何もしないで放っておくと、筋肉量は80歳でピーク時(30歳前後)の半分近くになってしまう場合もある。また、後ほど詳しく解説するが、厚生労働省の調査によると、要介護になった主な原因のうち、約4割は筋肉不足に関係しているという。
さらに、筋力は病気のリスクに関係していることも分かってきた。筋力が低下した人は、心不全や脳梗塞などでの死亡リスクが高くなり、糖尿病の発症率にも関係している可能性があるという。
立ったまま靴下をはけない… 筋肉貯金不足?
最近、こうした経験はないだろうか。
「道を歩いていて、小さな段差でつまずくようになった」
「立ったまま靴下をはけなくなった」
もし、こうした経験があるとしたら、それは筋肉が衰えてきたからかもしれない。
だが、多くの人は「まだまだ大丈夫」と油断して、すぐに行動を起こそうとはしないかもしれない。しかし、近畿大学生物理工学部准教授の谷本道哉さんは、50~60代からの「筋肉貯金」が大切だと主張する。
「しっかりと筋肉を蓄えておけば、年を取って筋肉が多少目減りしても大丈夫。これは老後に備えてお金を蓄えておくのと似ています。70代、80代、90代になっても元気に過ごすために、若いうちから筋肉の備えをしておこうというのが『筋肉を貯金する』という考え方。鹿屋体育大学前学長の福永哲夫先生が“貯筋”という言葉で以前から言われていました」(谷本さん)
谷本さんは2018年にNHKの「みんなで筋肉体操」という番組に出演し、筋トレの指導をして話題になった。番組の決めゼリフは「筋肉は裏切らない」だ。
