中性脂肪の減らし方、実はシンプル! カギを握る「3つの運動」とは
第2回 コレステロールと違い、中性脂肪は運動すれば確実に減る!
田中美香=医療ジャーナリスト
早いもので、もう1月後半。年末年始に暴飲暴食した後、「何とかせねば!」と思いながらも、ズルズルと過ごしてしまった人も少なくないだろう。そんな食生活の乱れが顕著に表れるのが、中性脂肪だ。だが、中性脂肪は頑固で落ちにくいという印象とは裏腹に、実は落としやすいのが特徴だという。その対策でキーとなるのが、「運動」で脂肪を燃焼させることだ。今回は中性脂肪対策を始めるにあたって押さえておきたい、3つのタイプの運動を紹介しよう。
中性脂肪を落とすために実践したい「3つの運動」

中高年の多くが気にする「中性脂肪」――。年末年始が過ぎると、中性脂肪の数値が跳ね上がる人が多い。その原因は、食べ過ぎ・飲み過ぎと運動不足だ。生活の乱れは中性脂肪の数値に表れやすく、正月明けの今こそ、最も注意すべき検査値の1つといっていいだろう。
この中性脂肪、基準値を超えて高くなると、さまざまな病気のリスクが高まる。
まず第1に動脈硬化を進め、心筋梗塞などのリスクが高まる。実は、血管の内側にこびりついて動脈硬化の直接の原因になるのはコレステロールであって、中性脂肪ではない。だが、悪玉のLDLコレステロールを小型化させて超悪玉を生んだり、善玉のHDLコレステロールを減らすといった悪影響がある。中性脂肪は、コレステロールが血管にたまって悪さをするのを助長する、「共犯」というべき存在なのだ。
中性脂肪が中等度に増えると動脈硬化を引き起こし、さらに高度に増えてしまうと猛烈な痛みを伴う急性膵炎を引き起こすリスクが高まる。第1回では、誤解されることの多い、こんな中性脂肪の特徴について解説した。
健康診断の結果を見て、「中性脂肪が高めだけど、特に自覚症状はないから…」と放置してしまうと、取り返しのつかないことになってしまう。読者の中にも、年末年始の暴飲暴食で中性脂肪が気になっている人は少なくないはずだ。先送りせず、年の初めのこの時期から対策に着手していただきたい。
しかし、中性脂肪を下げることが大切だと頭で分かっていても、厳しい食事制限やハードな運動なんて長続きしないに決まっている――そう思う人もいるだろう。だが、それは誤解だ。中性脂肪は、体内で分解されにくいコレステロールと違い、分解されやすいのが特徴だ。脂質対策の専門家で数々の著書も手掛ける帝京大学名誉教授の寺本民生さんは、「中性脂肪は下げやすいのが特徴です」と断言する。
中性脂肪を下げるのにやるべきことと言えば、言わずと知れた「食事」と「運動」の2本柱だ。摂取するエネルギーを抑え、運動により中性脂肪を燃やす――。いずれも重要な対策だが、まずはどちらから取り組めばいいのだろうか。
寺本さんは、「まずは運動から着手してください。中性脂肪を体の中で分解するには、中性脂肪を燃焼させる『運動』が一番効きます」と話しつつ、こんな例を挙げてくれた。
「最も分かりやすい事例はアスリートです。多くのアスリートはものすごい量の食事をとっています。たくさん食べても、それを消費するだけの運動をするから問題ないのです」(寺本さん)
確かに、アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)の選手が数千カロリーもの食事をとるという話はよく知られている。一般の人がそこまで運動するのは難しいが、食べ過ぎたら、そのぶん着実に運動量を積み増せば、中性脂肪をより多く燃やせることができる。運動しないから中性脂肪がたまりっ放しになるだけで、中性脂肪が燃焼するくらいの運動をすれば、ため込まずに済むのだ。
さらに寺本さんは、「運動は、中性脂肪を下げるだけでなく、血圧を下げる、骨を強くするなど、あらゆる面から健康維持につながります。いろいろな意味で、運動は人間の健康を保つのに非常に効果的なのです」と運動のメリットを強調する。
ただし、中には「運動したほうがいいのは分かっているが、何をすればいいか分からない…」という人も多いだろう。運動不足が10年、20年と続いていれば、本格的な運動はハードルが高いし、つらければ続かない。また、50、60歳になっていきなり激しい運動をして、関節を痛めたりしたら元も子もない。
そんな疑問を寺本さんにぶつけると、寺本さんは、「中性脂肪に最も効くのは有酸素運動」としつつ、理想は「有酸素運動と、筋トレ、ストレッチの3タイプの運動を組み合わせること」だと話す。そこで今回は、この3つの運動の効果と、具体的な方法について、寺本さんに聞いていこう。
