自宅でサクッと「ゆるHIIT」 道具いらず・超短時間の最強プログラム
第2回 たった4分で筋トレと有酸素運動を兼ねる「ゆるHIIT」の始め方
伊藤和弘=ライター
わずか数分の運動なのに、筋トレと有酸素運動の両方の効果が期待できると話題の運動法、HIIT(ヒット/ヒート)。血糖値や血圧の改善効果もあり、最強のアンチエイジング法として世界中の医師に注目されている。もともとアスリート向けのトレーニングだったが、全力の7割程度の負荷で行う“ゆるHIIT”にも十分な効果が期待できるという。そこで今回は実践編。『世界一効率がいい 最高の運動』(かんき出版)の著者でもある東海大学医学部内科学教授の川田浩志さんに、今すぐ簡単に始められる“ゆるHIIT”のやり方を教えてもらった。
わずか数分で筋トレと有酸素運動の効果が得られるHIIT

HIIT(High Intensity Interval Training:ヒットまたはヒート)とは、強度の高い運動を、短時間ずつ、休憩を挟みながら繰り返す「高強度インターバルトレーニング」のこと。筋力トレーニングと有酸素運動の両方の要素を持っている上、肥満や生活習慣病を改善する効果も高いことが明らかになり、近年はスポーツ医学のみならず世界中の医師に注目されている(詳しくは第1回参照)。
忙しい現代人にありがたいのは、時間がかからないことだ。本来なら筋トレと有酸素運動は体への作用が異なるので、両方バランス良く行わなければならない。とりわけ有酸素運動は時間がかかる。ところが筋肉に負荷のかかる高強度の運動を繰り返し行うHIITは、結果的に筋トレと有酸素運動を両方やったのと同じ効果がある。実際、厳密に運動している時間はわずか1分しかないHIIT(20秒×3セット)に45分の有酸素運動に匹敵する効果があったという報告も出ている(*1)。
アスリート用のHIITは全力に近い負荷をかけるが、「一般の人が健康増進目的で行う場合、全力の70~80%程度で行う“ゆるHIIT”でも十分効果があるという報告が次々と出ています」と東海大学医学部内科学教授の川田浩志さんは話す。
例えば米国のメイヨー・クリニックでは、心筋梗塞を起こした患者のリハビリにHIITを導入。12週間後に体組成や血液を調べると、空腹時血糖値、中性脂肪値、血圧、体脂肪の減り方など、ことごとく“ゆるHIIT”のほうが有酸素運動よりも効果が大きかったのだ(詳しくは第1回参照、*2)。
そこで今回はいよいよ実践編。前半では走る “ゆるHIIT”やこぐ“ゆるHIIT”、後半では、特別な道具も使わず、自宅で簡単にできる“ゆるHIIT” のやり方をお伝えしよう!
“ゆるHIIT”の強度は「全力の7~8割」、最大心拍数の80%
“ゆるHIIT”の定義は運動強度が「全力の70~80%」ということだ。最大限の負荷をかけて全力の運動をしなければならないアスリート向けのHIITとはそこが違う。全力の70~80%のレベルのHIITは、心筋梗塞を起こした人のリハビリにも応用されているほどだ。しかもサクッと終わる。運動経験のない人でも、これなら気軽に取り組めるだろう。
前回も触れたように、運動強度は最大酸素摂取量が目安となる。これは1分間に体重1kg当たりに取り込める酸素の量のことで、その人がどれくらいの体力があるか(有酸素能力)の指標になる。ただし、最大酸素摂取量は血圧のように簡単に調べることはできない。代わりに目安となるのが心拍数。川田さんによると、「全力の70%の運動は最大酸素摂取量が70%の運動に相当し、そのときの心拍数は最大心拍数の80%くらいになる」という。
![]() | ゆるHIITの目安は、全力の70% ≒ 最大心拍数の80%! |
この心拍数を、運動強度の目安にするといい。
*2 Dun Y, et al. Cardiovasc Diabetol. 2019;18:104.