1日わずか数分! 医師が勧める最強の運動法「ゆるHIIT」の驚きの効果
第1回 有酸素運動と筋トレの効果が得られるHIITに世界が注目
伊藤和弘=ライター
わずか数分の運動なのに、筋トレと有酸素運動の両方の効果が得られ、血圧や血糖値の改善効果もある「最強の運動法」をご存じだろうか。その名も、「HIIT(ヒット/ヒート)」。従来はアスリート向けのハードなトレーニングとして知られていたが、最近、全力の7~8割で行う“ゆるHIIT”でも十分に健康効果があるという報告が次々と出てきた。本特集は、HIITに関する著書もある東海大学医学部内科学教授の川田浩志さんへの取材を基に、新しい年に読者の皆さんにぜひ勧めたい、超短時間“ゆるHIIT”の驚きの効果と、自宅やジムなどで簡単に始められるプログラムを紹介していく。
数分で終わる“ゆるHIIT”は、どんなに忙しい人でもできる
新しい年を迎え、「今年こそ何か運動を」と考えている人も多いだろう。
運動が体に良いことは誰もが知っている。運動は肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症といった生活習慣病を改善するのはもちろんだが、それだけではない。144万人を対象にした大規模な調査から、食道がんや肝がんなど13種類のがんを発症するリスクを下げる可能性のあることも分かっている(*1)。さらに、将来の寝たきりを招くロコモ(ロコモティブシンドローム:運動器症候群)や転倒、うつ病、認知症を予防する効果もある。
にもかかわらず、定期的な運動習慣を持っている人は決して多くない。「運動しなければ」と思いつつ、いざ実行するのはなかなか難しいものだ。
なぜ運動できないのか? 2015年に内閣府が行った「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」によると、最も多い理由は「時間がない」だった。運動していない人のうち、実に42.6%もが「仕事(家事・育児を含む)が忙しくて時間がないから」と答えている。
気持ちは分かる。スポーツジムで汗を流そうと思っても、自宅からの往復時間も入れれば2~3時間はかかってしまう。毎日仕事や家事に追われて睡眠時間さえ削っている人が、そうした時間の余裕を持つことは簡単ではないだろう。また、後述するが、「健康のためには有酸素運動と筋トレの両方が大事」とよく言われている。トレッドミルで走ってからマシンで筋トレ、あるいは外でジョギングをして、家でも筋トレ…というふうに、二段構えが必要となると、なおさら面倒に感じてしまう人もいるかもしれない。
そんな忙しい現代人にうってつけの運動法が、HIIT(ヒット、またはヒート)だ。

HIITとはHigh Intensity Interval Trainingの略で、「高強度インターバルトレーニング」のこと。休憩を挟みながら、高強度の運動を短時間だけ繰り返す運動法で、例えば50メートルダッシュを、休憩を挟みながら数セット繰り返すようなものをイメージしてもらえばいい。このHIIT、1回数分~十数分という超短時間で終わり、かつ、筋トレ(無酸素運動)と有酸素運動の両方の効果が得られるというのだから、注目しないわけにはいかない。例えば「20秒運動して10秒休むのを1セットとして8セット繰り返す」場合、休憩時間を含めても、なんと4分(=240秒)という超短時間で終わってしまう。これなら、どんなに忙しい人でも「時間がない」とは言えないだろう。
HIITと有酸素運動の大きな違いは、運動強度と持続時間だ。ジョギングなどの有酸素運動は、きついと感じない中強度の運動を長時間続けるのに対し、HIITはきついと感じる高強度の運動を数十秒~1分程度行い、休憩を入れながら数セット繰り返して、短時間で終わる(図1)。運動の種類は「こぐ」(フィットネスバイク)、「走る」(ダッシュ)などさまざまで、運動時間と休憩時間の組み合わせも、厳密に決まっているわけではない。
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