医師がやっている科学的に証明された“風邪対策”とは?
第1回 風邪・インフルエンザはどこまで予防できるか
青木由美子=ライター/編集者
「マスクについての研究論文は少ないのですが、製薬会社のエーザイの調査(2012年11月)でマスクの利用実態がわかります。調査に協力したマスクを利用している日本人男女310人のうち、『マスクの着用は感染症予防に有効だと思っている』という人は、97%もいました。それにもかかわらず、73%の人はマスクを正しく使えていなかったのです」(大谷さん)
この調査によると、マスクの誤った使い方の例としては、「ウイルスが付着したマスクのフィルター部分を触ってしまっている」が43%、「マスクを外した後、手洗いできていない」が54%、「2日以上同じマスクを使用」が17%だった。
大谷さんによると、正しくマスクを使うためのポイントは、以下の4つだという。
- 1 正しいサイズのマスクを選ぶ
- 飛沫感染を防ぐには、鼻と口をぴったり覆う必要がある。ブカブカのマスクをするのはNG。「大人用」「女性用」「子ども用」のうち、自分のサイズに合ったものを選ぼう。横から見て、鼻からあごまで、しっかりと覆い、頬にフィットするよう装着する。「息が苦しい」とちょっとずらして鼻を出すのはもちろんNG。
- 2 マスクをつける前に手を洗う
- ウイルスがついた手でマスクをつけたら、ウイルスだらけのマスクを口にくっつけることになる。マスクを装着する前に、必ず手洗いをして、手についたウイルスを洗い流そう。
- 3 つけ外しはゴム紐の部分を持って
- マスクのつけ外しは、必ずゴム紐の部分を持って行う。特に外すときは、マスク表面部分には触れないように注意しよう。マスクの表面は飛んでくるウイルスを止めている「泥除け」のようなもの。そこを触ってしまうと、指にウイルスがついてしまう。
- 4 「使い捨て」を徹底する
- マスクは時間がたてばたつほどウイルスなどが付着して汚れていく。頻繁に交換することが大切だが、エーザイの調査にあるように、「2日以上マスクを取り替えていない」人も少なくない。1日に数回はマスクを交換し、使い終わったマスクは再利用することなく、「使い捨て」を徹底しよう。


マスクの使い捨てについては、「そこまでやらないといけないの?」と思うかもしれない。だが大谷さんによると、使い捨てを徹底し、細かいリスクをつぶしていくことが、風邪やインフルエンザの予防では大切だという。
「私は診察がある日は、1日に平均20枚ほどのマスクを使っています。1日に20枚というのは、さすがに商売柄というものですが、診察がない日でも、外出するごとに取り換えることにしていて、1日に4枚以上は使っています。医療従事者ではないみなさまには、これぐらいの枚数が目安になると思います」(大谷さん)
- 次ページ
- くしゃみ、手洗い… 感染予防は基本が大切