医師がやっている科学的に証明された“風邪対策”とは?
第1回 風邪・インフルエンザはどこまで予防できるか
青木由美子=ライター/編集者
誰しも健康や体調に気を使っているが、体調を崩したりして、仕事でパフォーマンスを発揮できなくなることがある。最も多いのが、ごくありふれた病気である「風邪」だ。たかが風邪と油断していると、何日も仕事に穴を開けてしまったり、こじらせてより重篤な肺炎などの病気につながってしまうこともある。そこで、呼吸器内科が専門で、毎日膨大な数の風邪患者を診察する池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんに、科学的根拠があり、大谷さんも実践している風邪対策について教えてもらおう。

「休みの日にはバタンキュー」を避けるための体調管理
もうすぐ年末年始の休暇がやってくる。旅行などの予定を立てている人も多いだろう。一方で、「自分はいつも“寝正月”だ」という人も少なくないのでは。家でのんびり過ごすのも悪くないが、休暇になったとたん、体調を崩して寝込んでしまい、そのまま“寝正月”になってしまった、という経験がある人もいるだろう。
12月はただでさえ忙しい。積もり積もった仕事の締め切り、会社の忘年会、そして久しぶりに旧友に会う予定などが詰まって、体調管理が二の次になり、その結果、せっかくの休暇が体調不良でつぶれてしまうというわけだ。
「体調不良で最も多いのが風邪です。成人でも年間2~4回は風邪をひきますし、人は人生の中で200回ほど風邪をひくといわれています。風邪をひくことによって起こる経済的損失を足し合わせたら、膨大なものになるでしょう。体調管理においてまず大切なのは、風邪やインフルエンザなどの感染症を予防することなのです」と語るのは、池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんだ。

大谷さんは、医師になって30年以上、ほとんど病気をしたことがないという。その秘訣は、徹底して「科学的根拠(エビデンス)」に基づいた体調管理を行うこと。科学論文を読むことが趣味という大谷さんは、新しい研究成果が発表されると、実際に自分の生活習慣に取り入れてみて、効果が感じられたら定着させる、ということを繰り返している。
「風邪はとてもありふれた病気です。たかが風邪と油断せず、きちんと予防し、また風邪のひきはじめにひどくならないよう手を打つことができれば、体調管理のかなりの部分は成功だといえます」(大谷さん)
大谷さんの専門は呼吸器内科。そして、クリニックは東京・池袋駅のほど近く。つまり、毎日、膨大な数の風邪患者を診察している。そんな風邪をひきやすい環境でも、自身は風邪をひかずに済んでいるのは、科学的根拠のある体調管理のたまものなのだ。
そんな大谷さんが、自分が実践している風邪予防を含めた健康管理についてまとめたのが、『絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理』(日経BP)だ。「ウイルスを指先につけないために、エレベーターのボタンは指の第二関節で、しかも端のほうを押す」「風邪のひきはじめにはプールで5分だけ泳ぎ、免疫力を上げる」といった、多くの人が実践できる方法が書かれている。
今回の特集は、その本の中から、大谷さんが実際にやっている、風邪・インフルエンザ予防策や、体調不良にならない体を作るための食事などの生活習慣について、紹介していこう。
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