これだけでOK! 血管のゴースト化を防ぐ2つの運動とは
第3回 激しすぎない有酸素運動とふくらはぎを使う運動で、毛細血管を増やす
田中美香=医療ジャーナリスト
体中の毛細血管が衰えて血流が悪くなり、老化やさまざまな病気の元になる「ゴースト血管」。毛細血管の状態は、加齢だけでなく、食事や運動などの生活習慣の良し悪しによっても大きく変わる。つまり、食事や運動を改善すれば、毛細血管のゴースト化を遅らせることは可能だ。食事面の対策を解説した第2回に続き、今回は「運動」のルールを取り上げる。ゴースト化を抑える運動のポイントを、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也さんに聞いていく。
激しい有酸素運動は、体のサビ「酸化」を進めてしまう

体のあらゆる機能は、多かれ少なかれ、加齢によって経年劣化せざるを得ない。これは血管も同様で、体の隅々を走る毛細血管が劣化すると、血流が減り、栄養分や酸素が末端まで届きにくくなる。これが「ゴースト血管」だ。
「たかが細い血管が少々傷んだくらいのこと…」などと侮ることなかれ。全身の血管の95~99%以上を占める毛細血管がゴースト化すると、体のあちこちで機能低下を起こし、肌や髪などの“見た目”の老化、さらには糖尿病や認知症などの発症にも深く影響する(第1回参照)。
「毛細血管の状態は、加齢だけでなく、生活習慣の良し悪しによっても左右されます。毛細血管をしなやかに保ってゴースト化を防ぐには、食生活の改善のほか、適切な運動も欠かせません」――。そう語るのは、老年医学や抗加齢医学の視点からゴースト血管の影響を研究する、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也さんだ。
毛細血管のゴースト化を最小限にとどめ、弱った毛細血管を再生させるためには、血流が重要だと伊賀瀬さんは指摘する。「毛細血管は血液に含まれる酸素や栄養素によって養われています。最近の研究では、血流が良くなると、毛細血管を形成する壁細胞や内皮細胞同士のつなぎ目が緩み過ぎないよう働くことが明らかになっています。つまり、ゴースト化によって減ってしまった毛細血管が再生しやすくなるのです」(伊賀瀬さん)
血流を良くするためには、第2回で紹介したように動脈硬化を防ぐ食生活も大事だが、運動面での対策も欠かせない。

伊賀瀬さんが勧める、血流を良くする運動の第1のポイント、それは体に酸素を取り入れながら体を動かす「有酸素運動」だ。血流を高めるほか、血管を柔らかくする効果がある一酸化窒素(NO)の放出を促し、血管の若返りにもつながる。さらに、余分な内臓脂肪を燃やすため、生活習慣病のリスクを下げるのもうれしい効果だ。
運動のもう1つのポイントは、下半身の筋肉、特に第2の心臓と呼ばれる「ふくらはぎ」を鍛えて、血液を心臓に押し戻す機能を高めることだ。「毛細血管には血液を押し戻す力はありません。下半身の筋肉を収縮・弛緩させ、足にたまった血液を心臓へと送り返すために、ふくらはぎを鍛えるのです」(伊賀瀬さん)
以下、激しすぎない有酸素運動、そしてふくらはぎを使う運動、この2つを中心に具体的な運動法を紹介していこう。
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